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リサーチ・フォーカス No.2023-036

【金融政策正常化シリーズ①】
利上げ効果強める住宅ローン変動金利 ― 中長期の消費押し下げ、20年前の2.4倍 ―

2023年11月08日 西岡慎一北辻宗幹


わが国では、金利が本格的に上昇する可能性が高まっている。最近では、賃金上昇を物価に反映する動きも広がりつつあり、日銀が短期金利を早晩引き上げるとの見方も増えている。

仮に金利が上昇した場合、家計では新規の借入が手控えられ、住宅投資などが減少する(金利チャネル)。これに加えて、既存の借入から生じる利払い負担の増加が消費を押し下げる効果も強まっている(変動金利チャネル)。わが国では変動金利型の住宅ローン残高が130兆円と大幅に増加したことがその背景にある。

試算によれば、変動金利が2%上昇した場合、返済負担の増加で借入世帯の消費が▲3%減少する。この影響で実質GDPは▲0.3%押し下げられる。この効果は20年前(同:▲0.1%)から2.4倍に拡大したほか、利上げによる住宅投資の減少効果(同▲0.2%)を上回る。これは、金利チャネルと並んで変動金利チャネルが金融政策の主要な経路となっていることを意味する。

利上げが実施されても、多くのローン商品には5年間変動金利が据え置かれるなど、激変緩和措置が設けられており、返済負担が短期間で急増する事態は避けられる。ただし、返済負担は先送りされるに過ぎず、中長期的には金利上昇の影響が顕在化し、消費の伸びが抑えられる可能性が高い。

さらに、変動金利の上昇で、債務不履行の増加や不動産価格の下落が生じる場合、金融機関の貸出態度が厳格化し、景気下押し圧力が強まる。こうした経済の悪化を和らげるためには、労働力の強化や生産性の改善で家計の所得環境を改善させ、金利上昇の耐性を強めることが重要となる。


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