リサーチ・フォーカス No.2023-034 米国学生ローン返済、消費を長期下押しも ― 年間の消費額最大0.4%減、デフォルト増加なら一段の減少 ― 2023年10月20日 松田健太郎米国では、コロナ対策として停止されてきた学生ローンの返済が10月より再開した。学生ローン残高は、GDP比で6%台半ばと大きく、家計債務の中では住宅ローンに次ぐ規模であるため、返済再開が個人消費に与える影響は大きい。政府は大規模な返済負担の軽減策を提示したものの、最高裁による違憲判決を受け、返済負担の軽減は一部債務者に限られるなど小規模にとどまった。この結果、返済猶予中の2,500万人弱が返済を再開することになり、年間返済総額は660億ドルに達すると試算される。これは、その分購買力を圧迫することで年間の個人消費を最大で0.4%ポイント押し下げる計算になる。さらに、学生ローンの返済再開は、短期的な個人消費を押し下げるだけでなく、中長期的な消費の伸びを抑える要因ともなりかねない。仮に、学生ローンの返済で、若年層のデフォルトが増加すれば、金融機関の融資姿勢が厳格化し、個人消費の押し下げ幅は一段と拡大する可能性がある。家計の全般的な信用力低下で、先々の住宅投資が抑制されることも考えられる。学生ローンの返済負担軽減に前向きな民主党と異なり、共和党は消極的である。この問題が中長期の米国経済に及ぼす影響は大きいだけに、来年の大統領選挙の帰趨を含め政策動向には注視する必要がある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)