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JRIレビュー Vol.8,No.111

ディープテック・スタートアップへの期待と課題

2023年10月04日 岩崎薫里


ディープテックとは専門性の高い先進技術であり、研究開発に長い時間と多額の費用を要し、不確実性が高いものの、成功すると社会に大きなインパクトを及ぼし得る。ディープテックを活用した事業に挑んでいるのがディープテック・スタートアップである。ディープテックの事業化は既存企業も行っているが、スタートアップが手掛けるメリットとして、業界の常識や過去の慣習にとらわれず、新しい発想で事業化に取り組むことができる点を指摘できる。

ディープテック・スタートアップは資金調達に苦労することが多い。これは、スタートアップへの代表的な資金提供者であるベンチャーキャピタル(VC)にとって、ディープテック分野への投資はリスク管理が難しい、資金回収までに長期間を要するなど、難易度が総じて高いためである。そこで、VCとは異なる投資判断や行動原理を有する資金調達先も必要となっており、なかでも政府からの補助金・助成金が重要な役割を果たす。また、最近では企業が直接、または傘下のコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)を通じて投資するようになっている。

近年、ディープテック・スタートアップへの注目が内外で高まっているが、スタートアップ大国のアメリカでも、この分野は過去の蓄積が通用しづらいうえ、これまでのスピード最優先の事業拡大モデルを適用できず、日本に対する優位性は相対的に小さい。一方で、日本には、①大学での研究開発力が高い、②ものづくり、なかでもすり合わせ技術に秀でる、③企業の層が厚く、状況に応じて対応可能な連携先が豊富に存在する、といった強みを有する。しかも、積極的な政策支援や、大学発スタートアップの増加などの追い風も吹いている。

もっとも、日本から世界で活躍するディープテック・スタートアップを輩出するには課題もある。主なものとしては、①ディープテック・スタートアップの数の大幅増、②大学やスタートアップの知的財産権の戦略的活用に向けた環境整備、③資金調達の円滑化、が挙げられる。これらに対処しつつ、横断的な取り組みとして以下の2点が必要と考えられる。

第1に、各大学における、ディープテック・スタートアップにかかわる人が交流するためのコミュニティづくりである。各自が自身のネットワークを駆使しながら知恵とリソースを提供し合うことで不足を補完し、ディープテック・スタートアップの立ち上げと成長を促進することができる。
  
第2に、企業とディープテック・スタートアップとの連携強化である。現在もオープンイノベーションを目的に連携が行われているものの、企業側の取り組み姿勢が必ずしも十分ではない。企業とディープテック・スタートアップが対等な関係のもとで情報や意見を出し合ってこそ、ディープテック・スタートアップの成長を後押しすることができる。また、それによりディープテック・スタートアップのもつ本来の強みが引き出され、オープンイノベーションの創出につながることになる。

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