リサーチ・アイ No.2023-034
2023年のユーロ圏ストレステストのポイント ~ 高金利下でも域内大手行の健全性は良好 ~
2023年08月25日 内村 佳奈子
本年7月28日、欧州中央銀行(ECB)と欧州銀行監督機構(EBA)は、監督下にあるユーロ圏の98行を対象としたストレステストの結果を公表。今回のテストでは2023~25年の3年間のストレスシナリオを設定。23年の実質GDP成長率が▲3.4%、24年が▲4.1%と大幅なマイナス成長となる一方、インフレ率と長期金利は高止まりするスタグフレーションを想定。
上記シナリオ下、対象行の普通株等Tier1比率(CET1比率)は、2022年末の15.1%から25年末には10.4%に低下。内訳をみると、金利高止まりによりネット金利収入の大幅な増加が見込まれるものの、インフレに伴う管理費の増加で相殺。また、返済能力の低下や利払い負担の増加等により、法人、個人の信用コストが増加。
前回テスト時よりも厳しい経済状況を想定したものの、CET1比率の低下幅は▲4.8%ポイントと小幅にとどまった(前回:▲5.2%ポイント)ほか、対象行のうち資本要件をクリアできなかったのは9行のみ(行名は非開示)。
今回のストレステストでは、欧州大手行がスタグフレーションに一定の耐性があることが示された一方、今後の欧州金融システムや金融機関のリスクを見ていく上では、以下の2点に注意。
-今回のテストは各国共通のシナリオ下で実施したものの、ユーロ圏は国毎の経済・政治情勢の違いが大きいため、各国の状況を個別に注視していく必要あり。
-また、テスト結果ではネット金利収入の増加を想定しているものの、足元では預金金利の上昇圧力の高まりがみられ、今後はネット金利収入が伸び悩む可能性。インフレを受けた費用増を吸収できず業績が悪化するリスクあり。
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