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リサーチ・フォーカス No.2023-022

【「年収の壁」打破への提言①】
賃上げ定着で5年後の労働供給2%減も

2023年08月24日 西岡慎一北辻宗幹


わが国では、「年収の壁」が人手不足を招いている点が問題視されている。本稿の目的は、「年収の壁」が経済全体に及ぼす負のインパクトを提示する点にある。

「年収の壁」による就業調整を背景に、非正規雇用者の労働時間が減少している。2022年には550万人の非正規雇用者が、税や社会保険料などの負担を回避するために労働時間を短縮し、収入を一定の範囲内に抑えている。こうした就業調整者の大半は有配偶の女性である。

就業調整は経済全体の労働供給を強く制約している。試算によれば、就業調整で 削減された労働時間はわが国の総労働時間を▲1.4%押し下げている。さらに、今後賃金が継続的に上昇していけば、就業調整の動きが一段と強まる恐れがある。仮に、非正規雇用の賃金が年率3%のペースで上昇すると、就業調整による総労働時間の押し下げ幅は、
2027年には▲1.9%に拡大すると試算される。

就業調整による労働供給の制約は都市部で大きい。都市部では、サービス産業に従事する非正規雇用者が多いほか、賃金水準が高いことも労働時間の削減幅を拡大させている。就業調整による総労働時間の押し下げ幅(2022年)は、大阪府や神奈川県などの都市部で▲2%弱に達している。

就業調整による労働供給の減少は賃上げ圧力を高め、これが一段の就業調整を生むことになる。その結果、経済全体の供給力は引き下げられ、高インフレが生じやすくなる。需要面では、労働時間の短縮が所得形成を妨げ、消費を停滞させる 結果、「賃金と物価の好循環」の流れは潰える。労働供給の強化に向けて「年収の壁」の問題を根本的に是正することが重要となる。


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