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リサーチ・フォーカス No.2023-020

インドのコメ輸出制限の影響

2023年08月16日 熊谷章太郎


2023 年7月、世界最大のコメ輸出国であるインドが、国内価格の安定を目的にコメ輸出を部分的に禁止した。この措置は各国に以下の影響をもたらすと考えられる。

インドへの影響:輸出制限は国内のコメ供給の安定性を一時的に高め、価格高騰リスクを抑制する。他方、農家によるコメの生産拡大や生産性向上に向けた取り組みを阻害し、中長期的なコメ供給不足を引き起こすリスクがある。

コメ輸入国への影響:インドからのコメ輸入への依存度が高いアフリカ諸国では、輸出制限が貧困や飢餓などの問題を深刻化させ、経済・社会を混乱させるリスクを高める。こうした国では、インド以外の国に輸入先を切り替えるとともに、コメ以外の食物の生産・輸入を拡大させることで食料の安定供給を図ると見込まれる。しかし、この過程で国際食料価格が上昇することが見込まれるなど、市況面にも今回の輸出制限による間接的な影響が生じうる。

インド以外のコメ輸出国への影響:インドの輸出制限はタイ、ベトナム、パキスタンなど主要なコメ輸出国にとって輸出拡大のチャンスとなり得る。しかし、こうした国では、インドと同様、現在進行中のエルニーニョ現象による異常気象によりコメ生産が伸び悩むリスクがある。輸出急増のあおりで国内供給が不安定化する場合、それらの国々でも輸出制限が講じられ、コメの国際価格が高騰する可能性がある。

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