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リサーチ・フォーカス No.2023-012

わが国財政が直面する“ソブリン・ストレス”リスクー財政再建は事実上無策の『骨太の方針』で高まる懸念

2023年06月27日 河村小百合


コロナ危機がようやく収束しつつあるにもかかわらず、わが国では財政の“大盤振る舞い”状態が継続するなか、国際社会からの視線は厳しさを増しつつある。

IMF は去る 3 月末に公表した 2023 年の「対日 4 条協議報告書」において、“ソブリン・リスク”という表現を初めて用い、財政運営の持続可能性への警告を発した。

わが国の政府債務の持続可能性分析において IMF は、①政府債務残高の対 GDP 比率と、②グロス所要資金調達額という“機械的なシグナル(mechanical signal)”では危険性が高い半面、国内の投資家層の厚み等を背景に、全体的な評価としては危険性のレベルは中程度(moderate)、という判断を示している。

もっとも、財政運営の持続可能性の鍵を握る金利と成長率の格差について IMF は、この先、勤労世代の減少が潜在成長率向上の足かせとなるため、より不利なものになり、政府債務の GDP 比率は上昇傾向をたどると予測している。金利が突然急上昇し、わが国が国債のデフォルトには至らずとも、急激な財政緊縮を迫られる“ソブリン・ストレス”状態に陥ることがあり得る、と警告している。

ところが、去る 6 月 16 日に閣議決定された「骨太の方針 2023」では、表面上は「歳出構造を平時に戻していく」などとうたいつつも、プライマリー・バランス黒字化の目標年度も明記せず、防衛力強化や少子化対策の財源にも一切言及しないなど、財政再建への取り組みは事実上“無策”であった。

このままでは、先行きの経済・金融情勢や市場環境の急変によって、IMF が指摘するように、わが国の財政運営が急激かつ大幅な調整を余儀なくされるリスクが懸念される。岸田政権はこの厳しい現実から目をそらさず、着実に財政再建の歩みを進めるべく、具体策を講じていくことが求められる。

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