リサーチ・アイ No.2023-020
米銀の2023年1~3月期決算にみる今後のリスクファクター ~ 調達コストの上昇と商業用不動産向け融資の動向に注意 ~
2023年06月15日 内村 佳奈子
米連邦預金保険公社(FDIC)が公表した米銀の本年1~3月期決算の集計値をみると、利鞘の改善によるネット金利収入の増加等により、当期純利益は前年同期比+34%増加。
一方、Silicon Valley Bankの破綻等を背景に金融不安が高まるなか、預金保険対象外の預金を中心に利回りの高いMMFに資金が流出し、預金残高は同▲6%減少。また、資産規模別にみれば、資産残高500~2,500億ドルの中堅銀行から2,500億ドル超の大手行へ預金が移動。
1~3月期の米銀の収益は総じて好調であったものの、先行きを見通すうえでは以下2点を注視する必要。
-1点目は、資金調達コストの上昇。米銀では、利上げに加えて、足元では預金流出に対応するため預金金利を引き上げており、収益が圧迫されやすい状況が続く見込み。
-2点目は、商業用不動産向け融資の劣化。米国では商業用不動産向け融資のうち、約7割を中堅・中小銀行が保有しており、総資産に占める割合も高水準。空室率の高まりや金利上昇によって不動産市況が悪化するなか、商業用不動産向け融資の劣化により、クレジットコストが増加する可能性。
米国銀行セクターの金融不安は足元で小康状態にあるものの、上記の通りリスクは依然残存しており、今後も不透明感が強い状況が継続する見込み。
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