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「ダムの治水・発電併用やデータ連携を起点にした流域全体の災害対策・地域振興」に向けた政策提言

2023年06月08日 石川智優瀧口信一郎、荒居祐紀、野々村真輔日吉淳


 気候変動の影響で水害が年々激甚化する一方、高度成長期に整備されたダムを中心に多くの治水インフラで老朽化が進んでおり、中には土砂や流木などの流入に維持管理が間に合わず、貯水機能が損なわれているケースも見られるようになりました。しかし、厳しい財政状況と人口減少に直面している地方自治体などにとって、ダムを新設することはもとより、維持管理に必要な費用の捻出や専門人材の確保などさえも容易なことではありません。
 そこで、流域全体に点在するダムの貯水能力を引き上げたり、ダム以外で貯水能力のある既設インフラを活用したりするなど、費用を抑えながら総合的な貯水能力を引き上げられる方法の開発が求められるようになりました。また、発電能力を増強し収益性を高めることによって、ダムや流域への積極的な投資を促しながら、民間企業や地域コミュニティなどに新たな治水の担い手として参画してもらうことが、ダムの維持管理や地域振興にとって非常に重要と考えられるようになってきています。
 このような状況を踏まえ、当社は、年々激甚化が進む水害への対策として、流域全体に点在する既設インフラの活用や気象・河川情報をデジタル技術で連携させることによる治水方法を検討する「流域DX研究会」(以下「本研究会」/ 注1)を2022年6月に立ち上げ、検討を行ってきました。今般、洪水調節用ダムや多目的ダム等の洪水調節用機能を有するダム(以下「治水ダム」)の利活用や流域でのデータ活用を起点にした治水施策及び地域振興の実現に向けた本研究会での検討の成果として、政策提言レポート『「ダムの治水・発電併用やデータ連携を起点にした流域全体の災害対策・地域振興」に向けた政策提言』(以下「本提言」)を取りまとめました。
 提言概要 
 提言本文 
 本提言では、既設ダムの利活用や流域でのデータ活用を起点にした治水施策及び地域振興の実現に向け、以下8点を提言しています。

【提言1】洪水調節や農地防災を目的に建設・運用されてきたダムの平時発電利用促進
【提言2】治水ダムを発電利用する場合は流域で田んぼダム等の貯水バッファを確保
【提言3】バックアロケーションの負担から使用水量や売上比率による費用負担への見直し
【提言4】予測技術・水位調整技術の活用を前提とした洪水期制限水位のさらなる緩和
【提言5】水源地一体管理の実現に向けた地域資金還元の仕組み化
【提言6】地域と一体になったダムの治水・発電併用の推進
【提言7】ダムの治水・発電併用と流域治水の一体化を目指すシステムの構築
【提言8】流域を持続可能なものとする産官学地域協働の必要性

(注1) 年々激甚化が進む水害への対策として、流域全体に点在する既設インフラの活用や気象・河川情報をデジタル技術で連携させることによる治水方法を検討するために設立した研究会
 既設インフラ活用などによる流域全体の治水対策の研究会を設立(ニュースリリース/2022年9月1日)


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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