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ビューポイント No.2023-004

全国平均1000 円超時代の最低賃金の在り方 ―欧州の事情を参考にした5つの提案―

2023年05月23日 山田久


2023 年の最低賃金は全国加重平均1,000 円の達成が視野に入るが、労使の代表が参加する審議会での不協和音が強まるなど、現行の決め方には綻びが目立っている。人手不足の深刻化やインフレ経済への移行の兆しなど、経済環境も大きく変わるなか、全国平均1000 円超時代の最低賃金の在り方を考察した。

最低賃金はかつて、中小企業の支払い能力の範囲内にとどめられていたが、政府は近年、最低賃金の引き上げが家計所得の底上げとともに中小企業の生産性向上を誘発し、経済好循環を生み出すという発想から、積極的な引き上げを継続してきた。

データを用いた分析やアンケート調査からみて、これまでの積極的な最低賃金の引き上げを受けた雇用減など目立ったマイナス影響はみられておらず、ここにきて人件費増の価格転嫁が進み出すなか、中小企業のスタンスも前向きになり始めている。もっとも、全体としてみれば、最低賃金引き上げが難しい企業も少なくなく、カイツ指標の水準が国際的にみて一定レベルに達するなか、従来以上にマイナス影響が生じないか考慮すべき段階に入っている。

海外事情も踏まえ、2023 年以降の最低賃金の在り方について以下の5点を提案したい。
① 2023 年の全国最低賃金の引き上げ額は40 円を軸として、水準を1000 円台に乗せる。

② 2024 年以降の引き上げにあたっては、平均賃金水準に対する比率を中期的な目標として設定する

③ 労働集約的な産業や未熟練労働者には、引き上げ幅を縮小したいわば"登坂車線″レートを設ける。

④ 産業別最低賃金制度を積極的に活用する。産業別最低賃金の設定を契機に産業別に労使が横の連携を深め、人材育成やロジスティック、さらには取引価格適正化などでの協調体制の構築を進める。

⑤ データ・エビデンスに基づく政策決定の仕組みを強化する。英国をモデルに専門委員会を組成し、十分な時間をかけてファクトを収集する体制を整備し、政策決定の透明性を高め、労使間の合意が行われやすくする。


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