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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.23,No.89

原油取引を中心に急接近する印露経済関係の行方

2023年05月12日 熊谷章太郎


国際情勢が複雑化するなか、インドは、自主独立を堅持し、自国の利益を最大化するべく各国と是々非々で付き合うという外交姿勢を強めている。インドは対中政策を念頭にG7(主要先進国)との連携を深める一方、G7の対露経済制裁の流れに逆行してロシア産の割安な原油輸入を急拡大している。G7の不評を買いながらもインドがロシア産原油を輸入する背景としては、①インドは所得水準の低さに起因する様々な経済・社会問題を抱える一方、原油価格の上昇に悪影響を受けやすい経済構造を有していること、②世界経済における存在感を着実に高めるインドの立場や主張をG7が受け入れるだろうという大国意識の高まり、を指摘出来る。

インドの原油輸入に占めるロシアの割合は2021年の2%から2022年秋口に2割強に急上昇し、最大の輸入先となった。価格の安さとともに調達先の多様化の必要性の高まりもインドがロシア産原油の輸入を急増させた理由である。G7の対露経済制裁に伴いロシアは先行き自動車、一般機械、電子機器などの物資の調達難に直面すると見込まれており、調達先をG7から中国やインドに切り替えようとしている。インド政府はこうした動きを自国の製造業の発展と輸出拡大に結びつけることを目指している。

先行きを展望すると、印露経済関係は原油取引を中心に「揺り戻し」を繰り返すと見ておくべきである。ロシア産原油の割安感や中東産原油の供給安定性などを踏まえて、インドは臨機応変にロシアからの原油輸入割合を調整すると考えられる。原油以外の品目については、インドの製造業の輸出競争力の低さやロシアの政治・経済を巡る不透明感などがビジネスの拡大の制約要因となり、二国間貿易の拡大ペースは緩やかなものにとどまると見込まれる。

印露経済の接近はG7の対露経済制裁の有効性を低下させるため、ウクライナを巡る世界の分断を長期化させる可能性がある。それにより対立する両陣営の経済成長率が低下する一方、「中立国」への生産移転という追い風を受けインドが成長率を高めていくことが出来れば、世界経済におけるインドのプレゼンスは急速に高まるだろう。しかし、世界の分断が長期化するなかでその責任の一端がインドにあるとの認識が国際社会で広がれば、インドと各国の間の新たな分断を生み出し、インドの成長率をむしろ低下させるリスクがある。

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