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JRIレビュー Vol.4,No.107

ユニバーサルツーリズムの普及・定着に向けて

2023年04月19日 高坂晶子


わが国では、加齢や各種障がいにかかわらず楽しむことのできる観光、すなわちユニバーサルツーリズム(以下、UT)に対応する事業者は現状少なく、社会的認知も進んでいない。

世界的にみると、SDGsの「誰も取り残さない」という趣旨から、UTを追求する動きは強まっており、観光立国を目指すわが国の誘客戦略上、世界標準のUT対応は重要となりつつある。国内市場においても、70歳以上の旅行実施率の低下に伴い、UT振興策の強化は必要である。

UTの普及・定着が進まない主な要因は、多数かつ細分化された業務を伴う、市場が小さいうえ高コストなため収益性が乏しい、社会の推進機運が弱い、等があげられる。

各地の先進事例から考えられる主な対策のポイントとして、3点指摘できる。

第1に、観光事業者にとどまらない広範な連携・協働を実現することである。行政機関や地元経済団体、NPO、介護・医療、教育機関等が専門性を発揮して多様な役割を分担することはもちろん、住民ボランティアや障がい者の貢献も重要である。

第2に、広報・啓発活動に注力することである。これにより、上記のような連携・協働に加え、UTの認知度向上や地元のUT受け入れ態勢の整備が図られる。

第3に、地域のまちづくりや地方創生の方針・計画とUTとの関連性を強めることである。これにより、UTを振興する取り組みがオーソライズされ、関連施策の進展を図ることができる。

今後、上記ポイントを踏まえたUT振興策の拡充強化を図りつつ、ネックとなっている観光事業者の消極姿勢を払拭するため、以下のような「ビジネスとしてのUT」振興策が考えられる。

第1は、観光事業者の懸念を解消し、UTの魅力を高めることで、UTユーザーを増やすことである。各地のUT情報をまとめて事業者に提供する場を設けたり、業態ごとにUT専門のレスキュー窓口を開設することが考えられる。また、事業の対象を、妊婦や幼児・ペットを帯同する旅行者、LGBTQなどにも広げ、UT市場の拡大を図る。

第2は、UTの知見・経験を活用して収益源の多角化を図ることである。UTの企画・手配や添乗員・ヘルパー派遣を専門的に担う事業、UTユーザーのニーズを踏まえたコンサルテーションや教育事業などが考えられる。

参入事業者が増えれば、UTユーザーの多様なニーズを充たす選択肢が増えよう。様々なバリアに直面するすべての人がストレスを感じることなく観光できる社会の実現に向けて、事業者に加えてユーザーや地域関係者も含めた幅広い連携・協働が望まれる。

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