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JRIレビュー Vol.4,No.107

豪中銀のコロナ危機下での非伝統的金融政策の総括-イールド・ターゲット、債券買い入れと今後の課題-

2023年04月10日 河村小百合


オーストラリア準備銀行(RBA)はコロナ危機下で初めて非伝統的な手段による金融政策を実施した。具体策は3年物国債金利を短期の政策金利(キャッシュ・レート)並みに誘導するという「イールド・ターゲット(YT)」政策と、豪国債等を買い入れる「債券買い入れプログラム」(BPP)等である。

その後欧米各国と同様、豪も高インフレ局面に直面し、RBAは2022年5月より金融引き締めに転じ、これらの非伝統的手段はすべて解除・終了している。

RBAはその後ほどなく、非伝統的な手段の効果や副作用を虚心坦懐に分析し、そこから教訓を導き出した『総括』を相次いで明らかにした。2022年6月にはYT、続く9月にはBPP、11月にはフォワード・ガイダンスの総括が公表されている。

YTの総括においてRBAは、導入当初は効果があったものの、その後、豪国内外の市場の先行き見通しの変化に対応し切れず、2022年秋の出口局面ではRBAの政策対応が後手に回って市場の混乱を招き、RBAの信認が痛手を負ったと率直に認めている。

他方、BPPの効果は国内の貸出金利や為替レートに対して認められ、導入当初の効果が特に大きいとしている。BPPはYTに比較すれば柔軟な運営が可能である半面、危機後の正常化局面では中央銀行の財務運営に重い負担が残ることが難点としている。また、すでに金融引き締め局面に入ったRBAは赤字に転落し、その状態は今後10年以上続くとの見通しが示されている。

危機時に取り組んだ新たな政策を虚心坦懐に振り返り、反省点を率直に明らかにして今後の政策運営に活かそうとするRBAの姿勢は、日銀も見習うべきである。

日銀の資産規模はRBAよりはるかに大きく、わが国の財政事情は豪よりはるかに悪い。このままでは日銀がいずれ迎える現政策からの出口局面は相当に無秩序なものとなりかねない。2023年4月に就任する植田和男新総裁のもと、日銀に残された時間的余裕はあまりなく、市場に先手を打つ形で、出口局面に向けての調整と政策運営を進めることが求められている。

合わせてわが国としては、中央銀行としての日銀の在り方を、豪における検討にもならい、外部からの客観評価を含めて再検討しつつ、政府との関係を立て直していくことが求められているといえよう。

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