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リサーチ・フォーカス No.2022-067

欧州の人権・環境デュー・ディリジェンス義務化と日本への示唆

2023年03月20日 森口善正


欧州では2015年以降、大企業に対してサプライチェーンを含めた人権デュー・ディリジェンスの実施を義務づける法律の制定が相次いでいる。それらの内容を子細にみると、義務づけの範囲や内容、実効性を拡充・強化する方向にあることがわかる。とりわけ、2022年2月に欧州委員会が公表した「企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令案」は、包括的な人権・環境デュー・ディリジェンスの実施を義務づける点で、日本企業に与える影響も大きい。

現状日本では、人権デュー・ディリジェンスの実施は企業に義務づけられていない。日本政府は2022年9月、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を公表したものの、ガイドラインに法的拘束力はなく、企業に人権デュー・ディリジェンスの実施を促すにとどまる。しかし、①人権尊重・環境保護に対する国際的な意識の高まり、②人権・環境ウォッシュ企業の排除による公平な競争条件の確保、③機関投資家のスチュワードシップ活動(企業に対し企業価値の向上や持続的成長を促すことで、中長期的な投資リターンの拡大を図る活動)を通じた人権・環境保護要請の強まり、等を踏まえれば、日本においても、大企業に対する人権・環境デュー・ディリジェンスの実施義務づけは不可避な流れと考えられる。政府は少なくとも上場企業に対し、実施している人権・環境デュー・ディリジェンスについての情報開示を早期に求めていく必要があろう。

日本企業においては、政府による義務化を待つまでもなく、人権・環境デュー・ディリジェンスの積極的な実施が望まれる。デュー・ディリジェンスの実施に際しては、とりわけアジア地域に広範なサプライチェーンを持つ日本企業において、サプライヤーがもたらす人権・環境関連リスクの特定とそれらへの対応が、大きな課題になると予想される。

先行する欧州企業の取り組み事例をみると、①Human Rights Officerや人権諮問委員会の設置等による内部管理体制の強化、②サプライヤー・リスク評価における外部リソースやテクノロジーの活用、③サプライヤー管理における業界共同イニシアティブ、④業界横断的な企業間データ連携基盤の構築、等が参考になる。


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