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ビューポイント No.2022-014

わが国のGX戦略の評価と今後求められる取り組み

2023年03月02日 大嶋秀雄


本年2月10 日、わが国政府は、社会・経済をクリーンエネルギー中心の構造に転換するグリーントランスフォーメーション(GX)に向けた基本方針(「GX実現に向けた基本方針」)を閣議決定。基本方針では、GX戦略の政策フレームワークの全体像とともに、カーボンプライシングの導入、原発新設を含めたエネルギー政策、中小企業のGX支援等の個別政策方針が示されており、一定の評価が可能。

一方、今回の基本方針では、①各政策の温室効果ガス(GHG)の排出削減見通しが示されず、政府の脱炭素目標との整合性が明らかでないほか、②不確実性が高い技術革新に依拠し、企業や家計の自主性が尊重されているなど、政策の実効性にも疑問が生じる、といった問題点が存在。

今後、GX戦略を推進するうえでは、以下の諸点に留意した取り組みが必要。
(1)機動的な政策運営:GHG排出削減見通しなどの期待される政策効果を明確化し、マイルストーンを設定のうえ、技術革新による削減実績を評価。必要に応じて以下で示すような追加的な施策を導入するなど、機動的な政策運営を行うこと。
(2)実効的なカーボンプライシング導入:カーボンプライシングを、GX経済移行債の返済原資の確保ではなく、本来の目的である低コストの排出削減策の推進のためのツールと位置付け、価格水準の引き上げや前倒し導入を検討すること。
(3)GXに消極的な企業や中小企業へのアプローチ強化:消極的な企業にGXに取り組む推進力を付与する観点から、情報開示を義務化して進捗状況を可視化するほか、一定の規制・ルールを導入して行動変容を後押し。
(4)家計部門における脱炭素意識醸成:温暖化やGXに対する家計の理解度向上を図るとともに、脱炭素への推進力をもたせる観点から、太陽光パネルの設置義務化、燃費の悪いガソリン車への増税等の施策を検討。

企業や家計に負担を求める施策を導入する際には、政府が施策の意義などを丁寧に説明し、国民の理解を得ることが必要。また、過度な負担を回避するためにも、GXに向けた取り組みへの補助金の拡充などの施策も併せて検討することが重要。
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