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救急搬送体制の維持・強化に関する提言
~“老々救急”社会に向けた救急業務省力化・身体負荷軽減に向けて~

2023年02月28日 山本健人、徳永陽太、長崎俊憲、川崎真規


全文資料

<要点>
●高齢化において救急出動件数が増加していく中、搬送を担う救急隊員の高齢化や、搬送人材確保の問題が顕在化することが想定される。高齢隊員の増加により、老々介護ならぬ“老々救急”といった状況にもなり得る。
●特に、過疎地域では、社会構造や周辺環境の変化により、救急搬送の需給バランスが崩れはじめており、既存の救急搬送体制では、増加する搬送需要に対応しきれなくなっている現状がある。こうした状況下では、現場で活動する救急隊員の疲労感や身体的な負担と、それに起因する救急活動中のヒヤリ・ハットなど、国民の不利益につながる事象が発生し得る。
●消防庁は、救急搬送体制の維持・強化に向け、消防の広域化や准救急隊員制度の導入、女性・高齢隊員の活躍促進に取り組んでいる。現場へのインタビューから、こうした取り組みの効果を実感する声がある一方で、救急隊員の負荷・負担に関する課題が挙げられた。
●自動心臓マッサージ器、エアー式ストレッチャー、電動ストレッチャー、装着型パワーアシストロボットなど、救急隊員の身体的負荷軽減・救急業務省力化に寄与する設備が登場・普及し始めている。こうした設備を導入することは、隊員の身体的負荷を軽減し、上述の取り組みの効果を促進するのみならず、住民/傷病者にとってはインシデント・アクシデントの減少や救急隊が駆けつけるまでの時間短縮や、傷病者の確実な搬送に貢献する。更に、腰痛をはじめとした隊員の身体不調をきっかけとした離職・休職・配置転換の防止による人材確保という価値を消防本部にもたらすと考えられる。
●救急業務の省力化・身体負荷軽減に寄与する技術導入・技術の発展を進めるにあたっては、地域の消防本部と技術開発を行う企業双方の目線での課題を解決する必要がある。消防本部の観点での課題は予算制約が厳しいうえ、緊急消防援助隊設備整備費補助金を用いると仕様外の機材の導入が難しくなる点が挙げられる。一方、企業側の課題は、技術評価から仕様への反映までのプロセスが明確でなく、時間もかかることから、市場としての予見性が低く、新たな技術開発・導入を行う動機が乏しくなる点である。
●こうした課題を解決するためには、技術導入の意義をより明確化することが不可欠である。それに加えて、技術導入を促進する補助金の設定や、常設の検討部会等を設置し、新規技術の探索、技術の評価や実証事業の実施、標準的仕様への反映までを一元的に行うプロセスと、既存調査・検証の活用による仕様への反映期間の短縮が必要である。

<本提言の帰属>
本提言は、株式会社日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門ヘルスケア・事業創造グループが、中長期的な観点から社会貢献をしたいとの考えから、公正・公平な視点を心がけた上で意見を取りまとめ、提示するものである。


協賛:日本ストライカー株式会社

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