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JRIレビュー Vol.1,No.104

アジア経済見通し

2022年12月26日 野木森稔、松本充弘、熊谷章太郎


2022年のアジア経済は総じて回復したが、そのペースは国・地域によって大きく異なっている。ゼロコロナ政策を堅持する中国の経済成長率は低下する一方、ASEANとインドは経済活動の正常化により高めの成長で着地する見込みである。2023年も、アジア全体で緩やかな経済成長が続くとみられる。ただし、ゼロコロナ政策を続ける中国や、先端半導体の需要減で輸出が下押しされる韓国や台湾の景気回復は、力強さに欠けると見込む。一方、ASEANとインドは、①堅調な財輸出、②本格的に回復するサービス輸出、③底堅い内需を背景に安定成長を実現すると予想する。

ASEAN・インドの安定成長と中国の景気停滞は、サプライチェーン再編の動きを加速させる可能性がある。ASEAN・インドにとって、「脱中国」の流れは成長力底上げにつながるチャンスとなる。例えば、中国からの生産拠点の移転が進んでいるベトナムでは、安価な労働力や中国との近接性、輸出環境の整備などの点で他国よりも優位性があり、今後も投資は順調に拡大すると見込まれる。また、アメリカによる半導体のサプライチェーン再構築や、世界的な資源確保競争の激化を背景に、マレーシアやインドネシアにも注目が集まっている。

アジア諸国では金融面の不安定化リスクに引き続き注意が必要である。アメリカが金融引き締め政策を急速に進めたことから、新興国通貨全般に下落圧力が高まっている。とくに、資源高の影響で経常収支が悪化した国では通貨下落圧力が強い。また、アジア諸国ではインフレ加速への対応に追われている。コロナ禍で拡大した財政支出は、2022年も物価高対策として家計支援関連が増加するなど膨張が収まっていない。双子の赤字や高インフレが深刻化する場合、資金流出が一段と加速するリスクがある。

主要国の経済動向をみると、中国では、活動規制の強化により低迷した4~6月期を底に持ち直しの動きがみられる。しかし、2022年の経済成長率は+3.3%と伸び悩み、政府目標を大きく下回る見込みである。2023年もゼロコロナ政策、不動産市場の低迷、米中対立の激化が景気の足かせとなり、成長率は+4.9%にとどまる見通しである。

インドでは、インフレによる景気下押し圧力を受けながらも、経済活動の正常化が進み、2022年度の経済成長率は+6.5%と、アジア新興国のなかでは高めの成長が続くと見込まれる。2023年度は+5.8%と景気拡大ペースはやや鈍化するものの、安定成長が続く見通しである。


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