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リサーチ・アイ No.2022-061

政府の資産所得倍増プランの目標設定をどうみるか ― NISA口座数倍増目標には後押しが必要、買付額の倍増目標は再考の余地あり ―

2022年12月13日 下田裕介大嶋秀雄


政府が11月28日に決定した資産所得倍増プランでは、今後5年間でNISA口座数と累積買付額を倍増させる目標を設定。NISAは既に投資の入り口として重要な役割を果たしており、NISAに基づく目標設定は妥当。ポイントはその実現可能性と具体的施策。

弊社試算によれば、口座数の倍増目標(約1,700万→3,400万)を実現するためには、証券投資が必要だと思うもののNISA口座を保有していない「潜在需要」を掘り起こすだけでは足りず。不足分を長期投資に向く若年層(20・30・40代)でカバーすると想定すると、各年代で人口比5%程度の「新規需要」上乗せが必要。結果として、20・30・40代の4割強がNISA口座を保有して初めて目標に到達することになり、ハードルは高い。

アンケート調査では、NISA口座を開設しない理由として、NISAに関心がある層については「手続きの煩雑さ」、NISAに興味がない層については「よくわからない」が大多数。目標の達成向けては、金融教育の充実などに加えて、簡便なネットでの口座開設方法を周知したり、制度の分かりやすい説明を幅広く展開することが重要。

こうした施策だけで目標達成が難しい場合、インセンティブによる後押しも一案。例えば、マイナンバーへの公金受取口座の登録では、マイナポイント付与により2ヵ月で1,500万件超を達成。NISA口座開設に対する同様のインセンティブ付与は検討の余地あり。

一方、NISA累積買付額の倍増目標(28兆円→56兆円)については、口座あたり年間買付額が一定であれば、口座数の倍増で買付額の倍増も達成可能。また、長期目標(家計の投資残高の倍増)を踏まえれば、フローではなく、ストックのNISA残高への目標設定が妥当。

残高の年間増加額は、時価変動を勘案しなければ、①「口座数×稼働率」×②稼働口座あたり年間買付額×③買越率(買越額/買付額)で計算可能。弊社試算では、①を口座数倍増かつ稼働率60%→80%、②を現状維持(相対的に買付額が小さいつみたてNISAの普及による買付額減少を回避)、③を40%→70%に引き上げれば、5年間で残高は3倍に。

残高目標を設定した場合、今回のプランで示された施策のうち、NISAの買付上限の引き上げは②の押し上げに効果があるほか、制度の恒久化や非課税期間の無期限化は長期保有を促すため③に効果あり。

一方、①に対する施策には不足感。稼働率の改善には、金融機関が口座開設だけでなく投資のサポートまで行うことが肝要。各金融機関の口座稼働状況を公表したり、複数口座の設定を可能にしたりすることにより、金融機関間の競争を促進することも検討の余地あり。


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