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リサーチ・フォーカス No.2022-046

金融レジリエンスの構築に向けた金融教育 ― カナダの取り組みから得られるわが国への示唆 ―

2022年11月11日 野村拓也


わが国では、国民の金融リテラシー向上の観点から、国全体での金融教育の推進策を検討中。これに対しカナダは、金融教育を国家戦略として推進。その中心的組織はカナダ金融消費者庁(FCAC)であり、同庁は、2021~26 年の国家金融リテラシー戦略に係る報告書において、金融教育により目指す姿を「デジタル化が進む世界で誰もが金融レジリエンス(金融面での困難に適応し耐え抜く能力)を構築できるカナダ」とし、具体的な施策を策定。

FCAC によれば、個人の金融レジリエンスは、収入や貯蓄などの財源、公的な支援、家族などの人的つながりといった「金融リテラシー・エコシステム」に依存。報告書では、ステークホルダーとして、政府・当局、金融サービス産業、コミュニティグループ等のそれぞれに対し、個人の金融レジリエンス構築に向けた役割を明示。

カナダにおける金融教育推進に向けた特徴的な取り組みとして、①複雑化している金融商品に関して、消費者が理解しやすい情報を提供しつつ、消費者の必要な商品を選別できる能力を高める取り組み、②消費者が自発的に適切な意思決定を行うよう、周辺環境を整える「行動デザイン」の施策への組み込みが存在。

カナダの取り組みから得られるわが国の金融教育への示唆は以下の通り。
-わが国では、金融教育についてイニシアチブを取る行政組織が不明瞭。国全体の施策とする場合には、各ステークホルダーの取り組みを統括する組織を明確化させることが重要。
-同様に、わが国では、金融教育に係るステークホルダーの範囲や役割が不明瞭。フィンテック企業などの新興の金融サービス業者など、ステークホルダーを幅広く定義したうえで、その役割を検証する必要あり。
-近年は、金融関連の情報が増大し、個人での整理・理解が難しい状況。わが国でも、金融商品などの情報を伝達する際の表現をわかりやすくするとともに、消費者が、金融情報を整理・理解できる能力の開発に取り組むべき。
-消費者がお金に係る意思決定をするタイミングで、貯蓄や投資などの情報を提供する「行動デザイン」を活用した取り組みは、わが国でも効果がある可能性大。カナダ同様、税金の還付時に情報提供を行うことも検討の余地あり。


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