コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.22,No.87

コロナ禍を経てアジアの人口動態の見通しはどう変わったか

2022年11月11日 熊谷章太郎


コロナ禍は様々な経路から各国の人口動態に影響を及ぼしているが、その表れ方はその国の経済・社会の発展状況に応じて異なる。ゼロコロナ政策を継続する中国を中心に東アジアで出生率が顕著に低下する一方、相対的に医療インフラが整備されていない東南・南アジアでは死亡率が大きく上昇した。この他、人の国際移動の縮小は人口に対する移民流出入比率の高い国に対して人口増加・減少圧力をもたらした。

コロナ禍が収束した後も、生活様式の変化や医療提供体制の見直しなどを通じた影響は一定程度残存すると見込まれる。こうしたなか、国連は2022年7月に公表した将来の人口推計(中位推計)で、少子化の加速を主因に東アジアの人口を下方修正する一方、死亡率の引き下げを主因に南アジアの人口を上方修正した。これは、今後、従来の予想よりも速いペースで南アジアと東アジアの人口差が拡大する可能性を示唆している。

人口は経済成長の源泉のひとつであり、東アジアと南アジアの人口動態の変化は両地域の経済成長率に影響を与える。ただし、①アジア各国・地域の経済成長率は労働投入量よりも資本投入量や生産性の動向に大きく左右されていること、②自動生産技術の発達・普及などに伴い労働投入量の重要性がこれまでよりも低下していく可能性があること、などを踏まえると、人口動態が変化したからといって経済の重点が東アジアから南アジアにシフトしていくとは限らない。

南アジアが人口増加に見合ったペースで経済面のプレゼンスを高めていけるか否かは、域内のビジネス環境の整備、政治・社会の安定、貿易自由化などを通じた外資誘致を通じて生産性を高め、輸出を通じて世界の需要を取り込んでいけるかにかかっているが、それらの実現に必要な取り組みは停滞している。

現時点では南アジアの成長急加速は考えにくいが、それでも世界全体の食料・エネルギーの安定供給や環境保全などをはじめ、国際連携が求められるグローバルイシューにおける同地域の重要性は着実に高まっていくと見込まれる。南アジアの発展の遅れは、域内各国の自国第一主義の強まりを通じて世界経済に悪影響をもたらしかねない。そのため、日本は各国と連携しながら援助とビジネスの両面から南アジア諸国の発展を支援していく必要がある。


(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ