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リサーチ・フォーカス No.2022-040

タイの最低賃金引き上げ、景気への効果は薄く ― 総選挙に向けて追加的なバラマキ政策実施も ―

2022年10月27日 熊谷章太郎


タイ政府は2022 年10 月に最低賃金を約3年ぶりに引き上げた。最低賃金の引き上げは家計の所得増加といった経路から景気を押し上げる一方、企業収益の減少や雇用情勢の悪化、インフレの加速といった経路から景気を悪化させる可能性がある。中長期的には、最低賃金の引き上げが賃金面の国際競争力を低下させることで経済成長力を低下させることも考えられる。

しかし、今回の最低賃金引き上げのタイ経済へのプラス・マイナス効果はともに限定的と判断される。その理由としては、①タイでは自営業者や無給家族従業者が就業者の過半数を占めており、最低賃金の適用対象となる民間部門の被雇用者の割合は4割弱に過ぎないこと、②被雇用者の割合が高い産業の多くは資本集約型産業であり、人件費上昇の影響は限られること、③バーツ安の進行や競合国の最低賃金の引き上げを理由に賃金面の国際競争力に変化は生じていないこと、を挙げられる。

今回の最低賃金引き上げが低所得者の生活環境を改善させる効果は限られる。こうしたなか、2023 年半ばまでに総選挙の実施を控える政府は、最低賃金の一段の引き上げや低所得者への現金給付や生活必需品の購入を対象とした補助金給付などの追加的なインフレ対策を検討すると考えられる。バラマキ色の強い政策が打ち出される場合、景気の拡大ペースは一時的に強まるものの、財政健全性の低下などに伴い中長期的な経済の不安定化リスクは高まることになる。


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