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リサーチ・フォーカス No.2022-037

米国に賃金・物価スパイラル上昇の影 ―賃上げ要求1970年代並みなら3年後インフレ率5%に高止まり―

2022年10月19日 西岡慎一


米国の賃金が大きく上昇している。これには、高齢者の早期引退や移民の減少で労働供給が不足していることが背景にある。賃金上昇は幅広い財やサービスの価格に転嫁されており、米国の高インフレを主導している。

賃金上昇が物価を押し上げる一方、最近では、物価上昇を賃金に反映させる動きもみられ始めている。一部の企業では、賃金に物価をスライドさせるCOLA条項が適用されている。賃上げを巡る労使交渉も激化しており、ストライキ件数は昨年の3倍弱に達している。新たに労働組合を立ち上げる動きも活発化しており、組合設立の申請件数も昨年から大幅に増加している。

物価上昇を賃金に織り込む動きには、①インフレを巡る不確実性が拡大している点と②労働者の交渉力が強まっている点が背後にある。供給制約を背景とした物価高は先行きのインフレ予想を困難にすることから、労働者は賃金の物価スライドを選好することが知られている。労働力不足が労働者の交渉力を強めていることも、インフレ防衛を目的とした賃上げ要求を強める要因となっている。

物価上昇が賃金に反映されると一段の物価上昇を招き、インフレ圧力が将来にわたって根強く残る。試算によれば、1970年代並みに賃金・物価の連動性が高まる場合、3年後のインフレ率は5%弱、5年後も3%台に高止まり、インフレの収束スピードは格段に鈍くなる。賃金・物価のスパイラルが強まると、たとえ部材、物流、資源といった種々の供給制約が解消されても、高インフレは容易に沈静化しない。今後、インフレの不確実性や労働供給の不足が解消され、賃金・物価の連動性を弱められるかどうかが注目される。


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