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リサーチ・アイ No.2022-038

金融庁・日銀による気候関連リスクのシナリオ分析と今後の課題~英・欧中銀のシナリオ分析との比較~

2022年09月02日 大嶋秀雄


本年8月26日、金融庁・日銀は、「気候関連リスクに係る共通シナリオに基づくシナリオ分析の試行的取組について」を公表。大手3銀行、3損保を対象に、脱炭素への移行や温暖化を想定した複数のシナリオに基づき、脱炭素に向けた規制や市場変化等による損失(移行リスク)や、気候変動に伴う災害の増加による損失(物理的リスク)を試算し、その分析結果と主な課題を示したもの。

同文書によれば、銀行の移行リスクは、高炭素排出産業中心に信用コストが増加するものの、増加額は各行のTCFDレポート等での開示額と同水準で、足元の純利益と比べて低位にとどまる。また、課題としては、将来の技術革新や事業構造変化等の想定に、各行でバラツキがみられた点などを指摘。

一方、本年5、7月に気候関連リスクの分析結果を公表した英・欧中銀と比較すると、金融庁・日銀の分析は、①対象金融機関が少ないほか、②セクター別、個社別の分析も限られ、③定量的な分析結果が非公表。したがって、今後は、気候関連リスクの地域差・産業差を踏まえ、地域金融機関による地域特性を反映した分析や、英中銀の分析で損失が大きかった生保による分析を行うとともに、産業別・個社別分析やリテール貸出の分析を強化して、こうした分析の詳細な結果の公表を検討すべき。

また、シナリオ分析の精度向上に向けて、企業の情報開示の促進や新たな分析手法の開発を進めるとともに、海外と連携して、先進的な分析手法の共有やデータ・分析手法の標準化を行うことも重要。こうした取り組みによって、気候関連リスクを精緻に把握できるようになれば、秩序ある形での脱炭素の推進にも大きく貢献するだろう。

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