リサーチ・フォーカス No.2022-031 プライマリ・ケアにおけるデータ整備・活用に向けて~家庭医登録制の導入と一体で推進を~ 2022年08月24日 成瀬道紀医療サービスの質向上と医療費の効率化に向けて、医療データの整備・活用が重要。政府も、医療データの活用に重点的に取り組み。このうち、医療機関・薬局などが医療データを共有する基盤となる医療情報プラットフォームの整備は高く評価。一方、そのプラットフォーム上でカルテのデータを共有できる目途がたたないことが大きな課題。わが国では、プライマリ・ケア(外来などの身近な医療)の担い手として期待される診療所でカルテの電子化や標準化が遅れており、プラットフォームがあっても、カルテのデータの共有は困難な状況。政府は、あるべき医療のビジョンを明確に示さないまま、現行制度を所与として既存データの利用検討を行うにとどまっている状況。医療データの整備・活用の観点からも、以下のように、わが国の医療に欠けていると長年指摘されてきたプライマリ・ケアを導入し、それに整合したシステムを構築することが有効。第1に、全ての国民がプライマリ・ケアの担い手である家庭医に登録する家庭医登録制の導入。患者は疾患の種類によらず、まず家庭医を受診し、重症等の場合に限り、専門医へ紹介される。家庭医の役割を果たすには、電子カルテが不可欠であり、家庭医登録制は標準的な電子カルテ普及を後押し。第2に、家庭医のカルテの患者要約情報の医療情報プラットフォームへの提供の義務化。患者の全体像を把握した家庭医が提供する情報を確認することで、他の医療従事者は患者の状況を速やかに把握可能に。第3に、家庭医向け標準的電子カルテの認定と普及。国は、医療情報プラットフォームに患者要約情報を自動的に提供できる電子カルテの規格を公開し、要件を満たしたベンダーの製品を認定する仕組みへ。上記の提言内容の大部分は、多くの国で実施されており、診療所(家庭医)への電子カルテの完全普及や医療機関等での医療データの共有が実現するなどの多大な成果。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)