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【ニューノーマルエコノミーシリーズ】
栄養編 |コロナ禍による栄養の偏りへの解決

2022年06月14日 大森充、eatas株式会社 代表取締役社長 手嶋英津子氏




新型コロナウイルス感染拡大は我々の生活を大きく変え、10年先の未来を目の前に運んできました。また、企業経営における価値観も変わりました。日本の名だたる経営者は「人が幸せになる」経営を訴え、持続可能な成長を模索しています。その結果、少しずつですが、新たな産業や新たな事業の芽が出てきています。そこで、「ニューノーマルエコノミー」シリーズと称して、各業界の第一線で活躍している方々に、ポストコロナ時代に向けた新たなビジネスについてお話を伺うこととしました。

第4回は、eatas(イータス)株式会社代表取締役社長の手嶋さんに「コロナ禍における栄養の課題と解決策」について伺いました。手嶋さんは中村学園大学大学院を修了後、企業の管理栄養士を経て大学講師となり、日本で初めて授業用食育アプリを開発し、管理栄養士で唯一のApple Distinguished Educatorに選出されています。現在は、テクノロジーの活用により、適切に栄養管理を提供する世界を実現するスタートアップeatas株式会社を創業されて代表を務める他、ダイエットカウンセリング協会顧問、AGE研究協会認定講師、「数字で分かる老けない食事AGEデータブック」監修等の実績をお持ちです。



(大森)
コロナ禍により人間の栄養摂取状態に偏りが出ているかと思いますが、手嶋さんはこの状況をどう見ていますか。

(手嶋)
人間が摂取する栄養についてはコロナ禍以前より問題があり、その問題がコロナ禍で加速したと思っています。コロナ禍以前は、例えば日本では過食や食事の欧米化による栄養の偏り、運動不足による生活習慣病、若年女性の痩身化、高齢者の低栄養、等、ざっくり言うと、「食べすぎ」と「栄養不足」の2つの大きな問題がありました。

(大森)
なるほど。栄養の偏りは健康状態に直結するのですね。

(手嶋)
そうです。コロナ禍は栄養の偏りと運動不足を助長したため、健康悪化が進んだ印象です。特に、私が認識している問題は3つあります。1つはよく言われる「コロナ太り」です。自粛による消費活動の減少により、総じて運動量が減る半面、都市圏では「ウーバーイーツ」等、手軽にファストフード等を手に入れられる環境が良くも悪くも整いました。また、中食が基本となる一方、外食の貴重性が増し、コロナ禍以前よりも1回あたりの外食で摂取する食事量も増えているとの声も聞きます。

(大森)
デリバリーツールは便利な半面、過栄養を助長する側面を持つのですね。

(手嶋)
はい。次に、「ワークスタイルの変化」も関係しています。これも結果として1つ目の「コロナ太り」を助長した理由と言えますが、コロナ禍によりリモートワーク中心の生活となり、オフィスへの通勤や移動等で消費していた運動量が極端に減少しました。例えば、オフィスへの通勤などにより1日あたり300~400kcalの消費量がなくなると、1カ月あたり1.3~1.7kg体重が増えることになります。コロナ禍で食事量は変わらないのに太ったという方は結構いて、「ワークスタイル別の食事法」といった講演依頼を頂くことがあります。

(大森)
リモートワーク中心の生活になりますと、どうしても運動量が下がってしまいますね。私もコロナ禍以前は1日1万歩弱歩いていましたが、それがなくなり、緊急事態宣言明けに急に外出が入ると少し歩いただけで疲れてしまう感覚がありました。

(手嶋)
はい、運動不足の結果、基礎的な体力や筋力も減ってしまいますので疲れやすくなってしまいます。3つ目は「ストレスによるホルモンバランスの変化」です。自粛により外出する機会が減ることで、ストレスの蓄積によりホルモンバランスが崩れることがあります。ホルモンバランスの乱れにより、急に甘いものが食べたくなったり、脂っこいものが食べたくなったりと、食事が乱れる原因となります。

(大森)
なるほど。運動不足の上に過食傾向になる理由は、ストレスが関係しているとなると自制をするのが難しくなりますね。

(手嶋)
そうなのです。コロナ禍以前は自分で食事に気を付けたり、運動したり、ということができた人でもコロナ禍中のストレスが原因で自制が効かなくなる方もいます。コロナ禍中は今まで以上に自分にあった食事や栄養について知り、その知識に基づいてストレスを感じない形で、食事を通じた適切な栄養を摂取することが重要です。

(大森)
農林水産省における「食育に関する意識調査(2021年度)」では、コロナ禍において健全な食生活を心がけている割合は75.4%という割合の一方、バランスの良い食事を取ることが毎日できているのは37.7%です。特に、20~39歳以下の若い世代においてその傾向が強いようです。したがって、若い世代ほど栄養摂取の重要性を認識しながらも実践できていないことになりますね。自分にあった適切な栄養の取り方を習慣化させるにはどうすればよいとお考えですか。



(手嶋)
理想は、日々の生活データを収受し、そのデータに基づき、自分に適した食事と栄養についての専門的なアドバイスを受けられる環境を整えることにあります。今、世の中には食事管理アプリ等もあり、以前よりはずいぶんと食事や栄養について知る機会が増えましたが、継続率が弱く、また、専門的なアドバイスになっていないこともあり、効果が限定的です。他方、本格的に管理栄養士に相談をすることも選択肢としては考えられますが、効果は出るものの金額が高い傾向にあり、手を出すのにはハードルがあります。

(大森)
手嶋さんが創業されたeatasで提供しているサービスはそのあたりのハードルを越えることができますか。

(手嶋)
我々も道半ばではありますが、越えられるように頑張っています。弊社のプロダクト「eat+」は登録された個人の情報を元に、日々の身体データとチャットによる食生活の情報から個人のワークスタイル、ライフスタイルに寄り添ったパーソナライズされた栄養と食事の専門的なアドバイスを管理栄養士が行うアプリです。他サービスの比較で言えば、①管理栄養士が専門的なアドバイスする点、②体重の増減ではなくパフォーマンスを成果として見ている点、③成果達成に対して地域社会を巻き込む点、にあります。



(大森)
成果がパフォーマンスというのはどういうことでしょうか。

(手嶋)
個々人の理想のライフスタイルやワークスタイルがあり、食事や栄養管理はその理想を獲得できる1つの手段です。健康になりたい人もいれば、きれいになりたい人もいます。また、部活動で良い結果を出したい人もいれば、会社員で生産性を上げたい方もいると思っています。経営者のような会食が多く、運動する時間もうまく取れない方で、それでも仕事における集中力を上げたいといった方もいると思います。弊社は個々人の理想のスタイルについて理解し、それぞれにあった食事や栄養の取り方について専門的にアドバイスをしています。

(大森)
単に痩せる、体重を落とすのではなくて、その先にある真の目標に照準を定めてているということですね。

(手嶋)
はい、その通りです。よって、全てがデジタルで機械的に処理するようなアドバイスではその目的は達成されません。目的達成のために、デジタル技術を使いながら人間が専門的にアドバイスすべきところは栄養士自身が担うといったスタイルを取っています。

(大森)
全てをデジタルに任せるのではなく、価値創出のポイントによってアナログとデジタルを使い分けていることが功を奏しているのかもしれませんね。以前、デジタル化やAIによってなくなる仕事というのが話題になりましたが、全てがデジタル技術に置き換わるものではなく、逆に人間が発揮すべきポイントが明確になっているのが良いですね。

(手嶋)
はい。全てがデジタル化されるような未来があるかもしれませんが、少なくとも今はそこまでデジタル技術が確立されていないため、そのようなスタイルを取っていますが、今後は蓄積したデータをAIに学習させて、より効率的で効果のあるやり方を模索していこうと思っています。

(大森)
コロナ禍またはアフターコロナ時代では、個人が自分のワークスタイルやライフスタイルにあった食事や栄養の取り方を学ぶ必要があり、そのためには日々の生活データを元にした専門的なアドバイスを手軽に、かつ、適切に獲得することが重要ということですね。

(手嶋)
はい、その通りだと思います。食生活を変える、栄養を管理するというと、「制限」や「我慢」といった負のイメージがどうしてもあります。目的に合わせて個人にあった栄養の取り方を知ることができれば制限や我慢は必要ないというのが、これまで管理栄養士として多くの方をサポートしてきた経験に基づく持論です。多くの方にとって食事は1つの楽しみとなっており、それを奪ってしまうのは結果的にストレスとなり、パフォーマンスも上がりません。楽しくおいしく食べながら成果に繋がる世界を多くの人に提供することができれば、多くの人が適量の食事を摂取することを覚え、近い将来に人類が直面する食糧不足といった社会課題解決にもつながると思っています。

(大森)
社会課題解決と言えば、「eat+」の特長として、地域社会を巻き込むとありましたが、それはどういう意味ですか。

(手嶋)
はい、これはまだ弊社では実装できてはいないのですが、これまで管理栄養士として月1,500以上のレシピを開発・管理してきたノウハウを生かし、「eat+」を活用いただいている方の居住地域の飲食店やスーパーとデータ連携して、その個人にあったレシピを提供して、地域社会の経済に貢献することを考えています。具体的には、いつも行っている飲食店で「eat+」レシピにあった食事を出してくれたり、スーパーの買い物に行く際にそのレシピを参考にしたりする等を想定しています。

(大森)
なるほど。「eat+」がその地域におけるデータプラットフォームになるということですね。近年では完全栄養食と呼ばれる市場も勃興しており、2027年には世界で約70億弱米ドルまで成長すると言われていますので、今後も栄養意識は高まり続けることが見込まれます。それでは最後に、ニューノーマル時代における栄養摂取のあり方についてコメントを頂けますでしょうか。

(手嶋)
コロナ禍はこれまで以上に偏食による栄養過多または不足を助長しました。運動不足も相まって、多くの人は自分たちの生きがいや働きがいのある活動に対してパフォーマンスを発揮しにくくなっていると思います。自分にあった栄養摂取を学び、楽しくおいしく食事を取ることが食育となり、その知識が全世界的に広まることができれば未来の食糧不足問題の解決にもつながると思っています。自分のためにも、未来のためにも、適切な栄養に関する知識を身に付け、自分のものにしていきましょう。

(大森)
今回はeatas代表取締役社長の手嶋さんに、コロナ禍における栄養の課題と解決策を伺いました。内容を要約すると、以下の3点になります。

コロナ禍で栄養に偏りを感じている方々に対し、ポストコロナに向けた「栄養摂取のあり方」について、ヒントを頂けました。手嶋さん、ありがとうございました。
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