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JRIレビュー Vol.7,No.102

世界経済見通し

2022年07月25日 西岡慎一


世界経済は緩やかに回復している。回復の原動力は世界的にウィズコロナ路線が定着している点にある。中国を除く多くの国で、行動制限が緩和されており、商業地や観光地の人流がおおむねコロナ前の水準に戻っている。これにより、外食や旅行などのサービス消費が回復している。多くの国の家計が高インフレに見舞われながらも、コロナ禍で蓄積された過剰貯蓄などを原資に消費活動を活発化させている。企業でも、デジタル投資や環境投資などコロナ後を見据えた設備投資が旺盛である。

今後の世界経済は、コロナショックからのリバウンド局面から軟着陸に向かう見通しである。主要国の中央銀行が政策金利の引き上げを本格化させることから、需要が抑えられる一方、部材や労働力などの供給制約が徐々に解消すると想定する。この結果、世界経済の成長率は2023年にかけて3%台前半を維持するとともに、高インフレは沈静化に向かうと見込んでいる。

もっとも、供給制約が予想以上に長引く場合、高インフレが継続することで、政策金利は一段と引き上げられ、景気後退が生じる可能性がある。なかでも、次の3点が主なリスクとして挙げられる。第1に、米欧の労働力不足と賃金インフレである。アメリカやイギリスでは労働供給が低迷しており、賃金が大幅に上昇している。これが定着すると、持続的な高インフレにつながるおそれがある。第2に、西側諸国のエネルギー不足と資源インフレである。西側諸国が対ロ制裁の一環でロシア産資源の禁輸措置を強化している。資源を円滑に代替できない場合、一段の資源高が生じるおそれがある。第3に、中国のゼロコロナ政策などによる世界供給網の停滞である。部材供給や物流の停滞を招き、財価格を上昇させる可能性がある。

高インフレの常態化は、インフレを巡る不確実性を高め、経済成長率を低下させうる点に注意を要する。高インフレ期には、インフレ変動が激しくなり、不確実性が高まる傾向がある。不確実性の高まりは、金利上昇や投資停滞を招き、成長力を弱める可能性がある。さらに、ウクライナ問題やゼロコロナ政策は、脱ロシアや脱中国の動きを加速させ、経済圏の分断につながりうる。経済圏の分断は物価変動の振幅を強める可能性があり、これがインフレを巡る不確実性を高め、成長率の低下を助長する。国際協調体制の整備などグローバル化の後退を防ぐ取り組みなどが重要となる。


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