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JRIレビュー Vol.7,No.102

日本経済見通し

2022年07月27日 村瀬拓人


足元の日本経済は、円安や資源高に直面しながらも、活動制限の緩和を受けた経済活動の活発化を背景に持ち直している。

円安は、輸入コストの上昇というマイナス面だけでなく、輸出企業の採算改善や海外子会社からの配当増といったプラス面も大きく、日本経済の一方的な下押し要因とはならない見込みである。円安により訪日旅行への潜在的な需要も高まっており、今後はインバウンド需要の回復による景気の押し上げも見込まれる。

資源高は、海外への所得流出を通じ日本経済にマイナスに作用する。もっとも、企業は経営効率の改善などにより、資源高に伴うコスト増をある程度吸収しており、利益率は上昇している。高水準の企業収益が設備投資を下支えしており、経済活動の正常化が進むにつれて、脱炭素などコロナ後を見据えた成長投資や、コロナ禍で先送りになっていた更新投資が活発化すると期待される。

家計の物価上昇への耐久力も高まっている。コロナ禍における自粛で積み上がった過剰貯蓄は、マクロベースでは物価上昇による家計負担の増加を大きく上回る。多くの世帯が、物価上昇に伴う一時的な支出増に対応可能であり、経済活動の正常化が進めば、個人消費の回復基調は大きく崩れない見込みである。

以上を踏まえると、日本経済は、円安や資源高に直面するなかでも、個人消費や設備投資にけん引される形で、景気回復が持続する見通しである。2022年度の成長率は+2.6%、2023年度は+1.4%と、ともにゼロ%台とみられる潜在成長率を上回ると見込んでいる。ただし、新型コロナの感染状況や資源価格の動向、中国のゼロコロナ政策など、日本経済を取り巻く環境には先行き不透明感があり、下振れリスクも大きい景気回復となる。

企業がコスト増の価格転嫁に慎重なため、物価と賃金の上昇は、欧米諸国と比べ限定的にとどまる見込みである。日本経済の成長に向けては、持続的な賃上げの実現が不可欠である。世界的なインフレを契機にコスト増を価格転嫁しやすい環境を整備し、コロナ後の賃上げと物価上昇の好循環につなげていくことが必要である。


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