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脱炭素を輪切りにして俯瞰する ~はじめに~

2022年06月03日 西村信吾


 脱炭素やカーボンニュートラルという言葉を聞かない日がない程、世の中は脱炭素化に向けて動き出しています。影響を受けない分野がないくらいさまざまなものに影響を与える動きなので、これを機に勉強を始めたという声をよく聞きます。ただ、それと同じくらい早々に挫折したという声も聞きます。

 次から次へと変更される制度や、作られる新市場、移り変わる評価基準など、脱炭素の影響で変化する内容が多すぎて、自社あるいは自分に関係する部分を押さえるので精いっぱいというのが理由の一つにあると思います。一方で、一部分だけ見ていても、それがどのように脱炭素の中に位置付けられていくのかよくわからないため、脱炭素の潮流の中で同じく変化していくその他の要素を十分にとらえきれず、実検討を行う上で抜け漏れが出てしまいがちであることもまた事実です。そうした時に、視点を自分に関係する部分の周辺に広げてみても、そこにはまた、粒度感も見ている時期も異なる、狭く深い世界が広がっていて、勉強しようとしても、直接自分に関係があるわけではないのでモチベーションが続かず諦めてしまう--。これが、脱炭素の勉強を始めたものの挫折した方の大方の経緯ではないかと勝手に推測しています。要は、脱炭素を薄く広く捉える方法が少ないのだと感じています。

 そこでこの連載では、可能な限り全体像から離れないまま、一回5000字(読むのにかかる時間が10分程度)以下の短い文字数を意識しながら、さまざまな視点で脱炭素を俯瞰していきたいと思っています。一回一回は薄い内容になりますが、それを繰り返すことで、全体像の中のどの部分の話をしているのか迷子になることなく、少しずつ理解を深めていけるのではないかと思っています。細部に入り込み過ぎず、全体像を毎回なぞりたいという思いから、各回を第1回・第2回ではなく、1巡目・2巡目と表現しています。
 1巡目から4巡目までは、日本で脱炭素を実現するためにはどのような方法があり得るか、エネルギー需給構造の視点で定量的に見ていきます。全体像を捉えることが目的のため、キリの良い数字に大胆に丸めている部分があることを予めご了承ください。また、電気・熱・交通といった種類の異なるエネルギーの量を直感的に比較できるように全てkWhの単位に揃えて表現しています。
 5巡目からは、脱炭素社会を迎えるまでの過渡期である2030年に向けた政府の計画も踏まえながら、脱炭素をきっかけに起こっているさまざまな動きが、どのような背景のもと、何を目指して行われているのか、それが企業や消費者にどのような影響を与え、どのようなビジネスに繋がっていくのか、などについてひも解いていきたいと考えています。
 数多くある脱炭素に関する項目を一つずつ解説していくのではなく、あくまで広く浅くにこだわる――細切れになったものを順番に飲み込んでいくのではなく、元の形のわかる輪切りのものを繰り返し消化していくというイメージから、タイトルを「脱炭素を輪切りにして俯瞰する」にしました。




※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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