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【IT動向リサーチ】
Internet Computerの概要 ~クラウドコンピューティング基盤を目指すブロックチェーン~

2022年05月30日 先端技術ラボ 會田拓海


一般にブロックチェーンは非中央集権的な仕組みをもち、この特徴を活用することによってWeb3(分散型Web)の実現を掲げるプロジェクトが興隆している。そのなかでも、総合的なサービス実行基盤としてクラウドコンピューティング機能の提供を目指して研究・開発が進められているのが『Internet Computer』と呼ばれる次世代のブロックチェーンである。
従来のブロックチェーンは取引データの保存やスマートコントラクト(*1)を用いたデータの記録を主な機能としている。これらの機能を利用したアプリケーションは分散型アプリ(Decentralized Application:DApp)(*2)と呼ばれるが、実際に分散されているのはDAppで利用するデータの一部にすぎない。DApp本体はWebアプリとして実装され、従来と同様にWebサーバー上で実行される。ブロックチェーンはデータ処理のみを担っているため、DAppの提供には外部のクラウドサービスなどを併用するのが一般である。しかし、クラウドサービスは大企業による寡占化が進み、運営面で分散しているとはいえない。
Internet Computerは従来のブロックチェーンの機能に加えて、より大きな容量のデータを保存でき、DAppの実行環境も提供している。暗号資産であるICPトークンを用いてInternet Computerのコンピューティングリソースを利用できる。データだけでなく実行環境も複数のノード(*3)に分散することで、耐改ざん性、耐障害性のある頑健なシステムを構築している。
一方、Internet Computerで実行するDAppの動作は、一般的なWebサーバーと比べて遅く、ユーザビリティーの観点で劣る。また、現状では導入コストがクラウドサービスより高価であること、従来のブロックチェーンと同様に法人で暗号資産を取り扱う場合に社内会計が煩雑になることなど、実運用上の課題は多く残る。しかしながら、アプリの実行環境を含めてサービス全体を分散化する試みは近年盛り上がりを見せるWeb3.0を具現化しており、将来のWebサービスの在り方を考える上でInternet Computerの動向は注目に値する。
本レポートでは、Internet Computerの概要や要素技術を概説し、簡易的な技術評価を通じた現時点のユーザーエクスペリエンスや将来展望を考察した。IT動向リサーチの一助としていただければ幸いである。

(*1)ブロックチェーンに指示を与えると、それに応じてブロックチェーン内に記録されているソースコードを呼び出し、実行する機能。
(*2)DAppはWeb3の一要素と考えられる非中央集権性、個々人によるデータ所有などの特徴をもつ。
(*3)ブロックチェーンを維持するプログラムを動かしているコンピューター。


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