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ビューポイント No.2022-002

「人的資本経営」をどう進めるべきかー二面作戦と産官学連携が鍵に

2022年05月19日 山田久


2020 年9 月に公表された「人材版伊藤レポート」を呼び水に、「人的資本経営」というコンセプトに注目が集まっている。ヒトを重視した経営を「感覚的」に行うのではなく、「戦略的」に行うものが人的資本経営であり、より具体的には経営戦略に連動して人材戦略を策定し、KPIを設定し、モニタリングによってPDCAサイクル廻すことが求められる。

「人的資本経営」の重要性が指摘されるようになった背景には、①経済社会のデジタル化が進展し、経済成長や企業成長にとっての無形資産の重要性が増すなか、その形成のカギを握る人材・人財をいかに強化するかにフォーカスが当たるようになってきたこと、②欧米でのコーポレート・ガバナンスにおける人材関連の情報開示の要請が強くなっているこ
と、がある。

「人的資本経営」が求める経営戦略と連動した人事戦略の構築には、ジョブ型人事制度の親和性が高く、その導入が進んでいる。成果主義が人件費削減のための後ろ向きの性格が強かったのに対し、今回のジョブ型ではデジタル化対応など人材獲得のための前向きの性格が強い。もっとも、ジョブ型には労働力の二極化をもたらすリスクがあり、人的資本経営を実践するには必ずしもジョブ型雇用が必須になるわけでもない。

人事戦略は経営戦略と連動性すべきという観点からは、米国企業とは異なる日本企業の競争優位性を考慮した人事制度を構築すべきことを忘れてはならない。具体的には、一国二制度的な発想で組織や仕組みを分け、①高い雇用の流動性を前提に破壊的イノベーションが起りやすい新たな組織・仕組みと、②長期雇用を前提に連続的イノベーションを継続していくこれまでの延長線上の組織・仕組みの2つを併存させる二面作戦を採るべきである。従業員に健全な危機感を持つよう促す一方、経営が現場との対話を大切にして「普通の労働者」の自己革新を促す形で実践していくのがわが国の目指すべき人的資本経営であろう。

「市場の失敗の内部化」によって企業が社会問題を解決できる分野は増えてはいるものの、それでも「市場の失敗」は残る。そこを補うのが政府を含めた広い意味での公共部門の役割である。人的資本経営をわが国で格差拡大を招くことなく実現するには、公的な人的投資を増額するとともに、そうした投資の実効性が高まるよう公労使・産官学の連携体制の構築をコーディネートするのが政府の役割である。その際、企業が具体的な職業経験を積む場を広く提供していくことが、効果の高い人材投資につながる鍵となる。

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