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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.22,No.85

転換点を迎えた中国の住宅市場―経済腰折れ懸念によって遠のく共同富裕の実現

2022年05月11日 三浦有史


中国では、2021年9月から住宅価格が低下している。在庫の積み上がり、不動産開発企業の業績悪化、不動産税の導入により、低下は長引き、低下幅も経験したことのない水準になる可能性が高い。住宅市場の落ち込みは、不動産開発企業の経営不安、地方政府の歳入減少、住宅購入者による集団抗議の広がりといった問題を招来する。

わが国では、中国における住宅バブル崩壊を示唆する見方が示されるようになっている。しかし、中国人民銀行の都市家計調査によれば、次期四半期の住宅価格の「低下」を予想する人の割合は2021年10 ~ 12月期においても15.2%と低く、依然として「不変」の56.7%、「上昇」の16.8%を下回る。

この背景には、①住宅価格の値下げ制限、②銀行融資の拡大、③補助金の拡大、④金利の引き下げ、⑤預託口座からの資金引き出し規制の緩和、⑥住宅公積金を使った融資の拡大、といった価格下支え策にみられるように、政府が住宅価格の低下を放置するわけがないという期待があると思われる。

住宅市場の飽和を見据え、供給を調整する動きがみられることも、バブル崩壊懸念を緩和する材料といえる。北京市の2020年の住宅市場が15年前と比べて5分の1に縮小したように、1人当たりGDPが6万元に達すると人口当たりの住宅販売戸数は減少に転じる。中国が住宅市場の飽和に適切に対応出来るか否かは、地方政府、不動産開発企業、住宅購入者が、市場は飽和に向かっており不動産開発業が成長をけん引する時代は終わったという認識を共有出来るかどうかにかかっている。

不動産税、人口減少、都市化の3点から市場の長期展望を試みると、不動産税は税負担を軽くし、住宅価格の「過冷」を加速しない配慮がなされると見込まれる。その一方、人口減少が住宅需要の減退を招来する事態は避けられない。都市化は、人口流入が進む沿海大都市と人口流出が続く3・4線都市という、住宅市場の二極化を誘発する。

習近平政権は、住宅価格下支え策を発動することで目先の経済成長を維持するという短期的な目標を優先することにより、住宅価格の低下を積極的に容認することで共同富裕を実現するという長期的な目標が遠のくというジレンマに直面している。共同富裕が形骸化すれば、習近平政権の言行不一致に対する不満は高まり、「内巻」や「横たわり」はさらに増えることとなろう。

住宅価格の急落によるバブル崩壊を回避するための最初の試金石は、3・4線都市が住宅価格の段階的な低下を積極的に容認し、不動産開発に依存しない経済を構築する決意を固めることが出来るか否かにある。
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