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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.22,No.85

気候変動問題に対処するファイナンスの課題とASEAN諸国の事例

2022年05月11日 清水聡


世界の気温上昇を1.5℃に抑制するためには、2050年までに100 ~ 150兆ドル程度の累積投資額が必要であるという推計がある(1年当たりでは3~5兆ドル)。このうち、アジアが全体の55%を占めており、また、産業分野別にみると、電力が約49%、運輸が34%を占める。グリーン・ファイナンスを拡大するためには、様々な制度を整備するとともに、ステークホルダーである政府、企業、金融機関(銀行や機関投資家など)がそれぞれの役割を果たすことが求められる。さらに、グリーン・ファイナンスとともにトランジション・ファイナンスが重視されるようになっている。これは、長期的に温室効果ガス(GHG)の排出削減に取り組む企業を支援する金融手法である。これを推進するにはトランジション・ファイナンスを精緻に定義することが一つのポイントであり、本稿ではClimate Bonds Initiativeによる議論を紹介した。

ASEAN諸国では、エネルギー生産における化石燃料への依存度が高いことが特徴となっており、再生可能エネルギーへのシフトが不可欠である。また、自然災害に見舞われやすい同地域では、気候変動への適応も重要な課題となっており、ファイナンスの拡大を含め、対策が求められている。気候変動の緩和に関しても、排出量削減目標の明確化やファイナンスの確保などが課題となっている。

ASEAN諸国におけるグリーン・ファイナンスの拡大は総じて遅れ気味であり、制度枠組みと金融システムの整備が求められている。制度枠組みの整備に関し、本稿では、環境・気候関連データの整備とカーボン・プライシング制度の導入に向けた動きについて論じた。どちらも枠組みの構成要素として極めて重要である。また、金融システムの整備に関しては、中央銀行が金融機関の規制監督体制の構築に取り組むとともに自身のポートフォリオにおける脱炭素を進めること、銀行が社内ガバナンスを確立してサステナブル・バンキングを推進すること、政府や公的機関などによる取引も活用してグリーンボンド市場を拡大すること、ESG投資の普及を図ることなどが重要である。

グリーン・ファイナンスにおいて、インフラ整備が占める比重は大きい。気候変動問題や社会的な課題への対処に資するサステナブル・インフラの整備に注力することが求められる。そのために政府や金融機関は環境・社会リスクに関する知識を向上させ、サステナブル・インフラの拡大を着実に実現していく必要がある。

ASEAN諸国におけるグリーン・ファイナンスの事例として、本稿ではインドネシアのクリーン・エネルギー分野のファイナンスについて述べた。OECDの推計では、同国の発電分野のファイナンスが国内資金によって賄われている割合は20%強にとどまっている。インドネシアは、国内金融資本市場におけるグリーン・ファイナンスの体制整備に努め、国内からの資金調達を拡充する必要があろう。
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