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関係人口拡大に向けた「もうひとつの発想」の提案

2022年04月12日 福田彩乃


 農村部では人口減少・高齢化が著しく、様々な暮らしの場面で、これまでの営みを維持することが、なお一層難しくなりつつある。例えば、鳥獣害対策を担う猟友会メンバーが高齢化してしまい、捕獲効率が低下し、鳥獣による農産物の食べ荒らしを抑えられないという地域がある。また、これまで恒例行事だった夏祭りで、参加者・運営者双方の人数が縮小してしまい、自治会としての経費予算の積立を辞めてしまった例もある。そうしたなか、地域を支える人材として期待されているのが、地域の外から地域と関わる「関係人口」だと言われる国土交通省のアンケート調査によると、全国の関係人口は1,800万人超、割合にして18歳以上の国内居住者の約2割弱が、どこかの地域を定期的・継続的に訪れており、縮小していく地域にとって、その存在は見逃せないものとなっている。

 関係人口と位置付けられる人々の地域における過ごし方は、地場産品を購入する消費活動、趣味活動、イベント等への参加が多数を占めるという。実際に、地域側も「魅力を知ってもらう」「好きになってもらう」「応援してもらう」ことを狙いとして、地域の魅力を洗い出し、高めるような施策を次々に打ち出している。しかし、地域が関係人口に期待するのは、「地域課題を解決する担い手として活躍してもらうこと」であり、更にもう一歩踏み込んだ関わりを促す工夫が必要なのではないだろうか。

 その鍵は、地域に住む人々にとっての「進んでやりたいわけではないこと」「できないこと」(その結果、課題となっていること)と、都市部の人々の「面白がれること」「スキルを活かしてやってみたいこと」をマッチングすることにあると考えられる。例えば、畦畔の草刈りは、地域の人々の「進んでやりたいわけではないこと」の一例である。ここで、従来型の刈払機を使って都市部の人々に手伝って貰うとすれば、手伝って貰う人にも体力が必要で危険も伴うが、ラジコンの要領で草刈りができるリモコン式草刈機を導入してみるのである。すると、ラジコンを趣味とする人達が「面白がって」「スキルを活かして」手伝ってくれることになる。結果として、雑草管理も上手く進むのではないか。あるいは、鳥獣害に悩む地域では、全国に存在する、射撃・射的を趣味とする人達の力と組み合わせることも夢ではない。VR技術を活用して、都心部にいながら中山間地の状況下の射撃・射的の練習シミュレーションもして貰いながら、ときには現地で鳥獣害駆除の担い手として活躍できる即戦力にもなって貰えるだろう。

 草刈りや鳥獣害対策はあくまで一例に過ぎない。具体化するためには、マッチングの仕組み、報酬の在り方、さらには関係人口の過大な流入にならないような工夫を検討する必要もあろう。ただ幸いにも、地域側は無価値だと思うことを、面白がる都市部の人は一定数存在する。またデジタル技術の進展で、これまで考えられなかったスキルや人材とのマッチングの可能性は広がっている。地域側が、魅力だけでなく足りない点も含めて洗い出し・整理し、都市部に暮らす人々のスキル・関心と組み合わせる発想を持てれば、関係人口による地域づくりは次のステージに移るだろう。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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