コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

中国グリーン金融月報【2022年3月号】

2022年04月11日 王婷


「中国グリーン金融月報」3月号をお届けします。

1.今月のトピックス
【国家発展改革委員会】「水素エネルギー産業発展中長期計画(2021~2035)」
 3月23日、国家発展改革委員会と国家エネルギー局は共同で、「水素エネルギー産業発展中長期計画(2021-2035年)」を公表した。
 計画では、水素エネルギーの特性を、「将来の国家エネルギーシステムの一部であり、水素エネルギーのクリーンで低炭素な特性をフルに発揮し、旺盛なエネルギー消費、高排出産業をグリーン低炭素へ転換するように推進する。同時に、水素エネルギーを戦略的新興産業として位置づけ、グリーン低炭素産業システムの構築と産業変革とアップグレードの新たな成長ポイントである」と明確にした。
 水素エネルギー産業の発展の目標について、下記が明確化された。
・2025年までにコア技術と製造プロセスを習得し、燃料電池車両の保有台数を約5万台、水素ステーションを整備し、再エネ由来の水素生産量を10~20万トン/年、CO2排出量を100~200万トン/年削減する。
・2030年までに、水素エネルギー産業の技術革新システム、クリーンエネルギー水素製造、供給システムを形成し、炭素ピーク目標の達成を強力に支援する。
・2035年までに、水素エネルギーの多元的応用環境が形成され、再生エネは最終エネルギー消費に向けて水素化される。
コメント:カーボンニュートラルを推進する「1+N」政策体系の一環として、個別分野の計画である「N」が最近相次ぎ作成され、公表されている。例えば、3月11日に住宅・都市・農村建設部は「第14次5カ年建築省エネ及びグリーン建築発展計画」を公表。3月21日には国家エネルギー局と国家発展改革委員会が共同で、「第14次5カ年新型エネルギー貯蓄発展実施方案」を公表。3月22日には国家エネルギー局と国家発展改革委員会が共同で「第14次5カ年現代エネルギーシステム計画」を公表。3月23日に国家発展改革委員会と国家エネルギー局が共同で、「水素エネルギー産業開発中長期計画(2021-2035)」を公表した。エネルギー分野において、CO2排出ピークアウト、カーボンニュートラルに向けた取り組み内容、目標が明らかにされ、目標実現のためのロードマップが描かれたことになる。
2022-3-23 国家発展改革委員会
https://www.ndrc.gov.cn/xxgk/zcfb/ghwb/202203/t20220323_1320038.html?code=&state=123


2.今月のニュース
(1)-① 中央政府・グリーン金融
【中国人民銀行】グリーン金融がカーボンピークアウト・カーボンニュートラルの達成を支援

 2021年に人民銀行は2つの構造的に新たな金融政策手段を創設した。一つはクリーンエネルギー、省エネ・環境保護、炭素排出削減技術の3つの炭素削減分野の発展を支援する「炭素排出削減支援スキーム」である。もう一つは、石炭のクリーンで効率的な利用を支援するための特別融資で、石炭の大規模グリーン生産、クリーン燃焼技術の利用など7つの分野を支援するものである。
 2021年末には中国の内外通貨建てグリーン融資残高は前年比33%増の15.9兆元となり、規模的には世界第1位となった。2021年には国内のグリーンボンドの発行は前年比180%増の6000億元超となり、残高は1兆1,000億元となった。
2022-3-4 中国人民銀行
http://www.pbc.gov.cn/goutongjiaoliu/113456/113469/4500507/index.html

【生態環境部】炭素排出報告データの改ざんなどの典型的な問題事例を公開
 2021年10月から12月にかけて、生態環境部は、炭素排出報告書の品質に関する特別な監査を実施した。発電分野の主要な技術サービス機関と関連の排出権規制企業を対象とし、石炭サンプル採取、石炭品質試験、データ検証、報告書作成などの主要なプロセスに焦点を当てた詳細な現場監査と検査を実施した。この結果、中炭能投(北京)有限公司などの組織が試験報告書を改ざん、偽造し、誤った石炭サンプルを作り、報告書の結論を歪め、虚偽の開示をしているなど問題を発見した。
2022-3-14 生態環境部
https://www.mee.gov.cn/ywgz/ydqhbh/wsqtkz/202203/t20220314_971398.shtml

【国務院国有資産監督管理委員会】科学技術革新局と社会責任局を設立
 中央企業の科学技術革新と社会責任を効果的に推進するため、中央编制委員会の承認により、国務院国有資産監督管理委員会は科学技術革新局と社会責任局を設置し、先日、設立総会が開かれた。社会責任局の重要任務について、国有企業のピークアウトとカーボンニュートラル関連業務を重点的に把握し、「一企業一策」でカーボンピークアウトとカーボンニュートラルを強力かつ秩序よく推進することである。国有企業のCSRシステムの構築に取り組み、ESGの理念を積極的に実践し、国際ルール基準の策定を積極的にリードし、持続可能な開発をよりよく推進すると強調した。
2022-3-16 国務院国有資産管理委員会
http://www.sasac.gov.cn/n2588025/n2643314/c23711009/content.html


(1)-② 中央政府・「3060目標」、その他
【国家標準化管理委員会】国家カーボンピークアウト・カーボンニュートラル標準化グループを設立

 3月9日、国家標準化管理委員会が、「国家標準化管理委員会の国家カーボンニュートラル標準化グループ設立に関する通知」を発表し、国家カーボンニュートラル標準化グループを正式に設立した。グループ長、副長、顧問、専門家メンバーなど43名のメンバーを発表した。
 国家標準化管理委員会は、中国のカーボンピークアウト・カーボンニュートラル基準の構築を提案し、国家基準の制定、基準の適用と実施、基準の国際化を指導・展開し、関連基準の技術提案を調整し、カーボンピークアウト・カーボンニュートラル基準との技術整合性をサポートする責任を担う。市場監督総局標準技術司交通能源と資源環境処、標準司国際標準化組織(ISO)連絡処は、日常連絡等の業務を行うという。
 国家カーボンピークアウト・カーボンニュートラル標準化グループは「標準化グループ構築活動ガイドライン」の要求に従い、効果的な作業メカニズムやモデルの形成を模索し、カーボンピークアウト・カーボンニュートラルの目標達成のために基本的かつ先導的な役割を果たすことになっている。
2022-3-14 市場監管総局
https://www.samr.gov.cn/xw/zj/202203/t20220304_340186.html

【国務院】「政府工作報告」を実施するための重要任務と役割分担に関する意見を公表
 この頃、国務院は、「「政府工作報告」を実施するための重点任務と役割分担に関する意見」を公表した。カーボンピークアウトとカーボンニュートラルを秩序よく推進すると言及した。①カーボンピークアウト行動方案を推進、②エネルギー革命を推進し、エネルギー供給を確保し、資源配分に基づき、エネルギー低炭素転換を推進する。石炭のクリーンで効率的な利用を強化し、石炭の省エネと炭素削減、熱供給の変革を促進する、③大型風力・太陽光発電基地の建設と調整電源計画の構築を推進し、揚水蓄電施設の建設を強化する、④バイオマスの発展を支援する、⑤エネルギー多消費で、排出量が大きいプロジェクトの発展を抑制する、⑤エネルギー消費の規制から炭素総排出量と強度の「二重規制」に転換し、汚染削減と炭素削減のインセンティブと抑制政策を改善し、グリーン金融を開発し、グリーン低炭素生産ライフスタイルの形成を加速するなど具体的な項目が挙げられた。
2022-3-21 中国人民政府
http://www.gov.cn/zhengce/content/2022-03/25/content_5681343.htm

【国家発展改革委員会等】 「一帯一路」 のグリーン発展の共同構築を推進に関する意見公表
 3月28日、国家発展改革委員会など関連部門が共同で「一帯一路グリーン発展の共同構築を推進に関する意見」を公表した。①グリーンインフラの連携を強化、②グリーンエネルギー協力を強化(太陽光発電や風力発電の事業者に「海外進出」を促進。再生可能エネルギー発電、原子力発電、スマートグリッド、水素エネルギー、エネルギー貯蔵、CCS等をめぐり、共同研究、交流・トレニンーグを行う)、③グリーン交通の協力を強化。④グリーン産業における協力関係を強化(企業が再エネ産業、再エネ自動車製造などの分野で投資と協力を行うことを奨励し、「海外進出」企業のグリーン、低炭素発展を促進)、⑤グリーン金融の協力を強化、⑥グリーン基準関連の協力を強化、⑦石炭火力発電などのグリーン・低炭素化の発展を推進、など重要任務が定められた。
2022-3-28 国家改革委員会開放司
https://www.ndrc.gov.cn/xwdt/tzgg/202203/t20220328_1320630.html?code=&state=12


(2)-① 地方政府・グリーン金融
【赣江新区】中国初のカーボンフットプリント開示にリンクする融資が発行

 建设银行赣江新区支店はこのほど、中国初のカーボンフットプリント開示にリンクする融資を実行した。カーボンフットプリント開示にリンクする融資は生産工程における「カーボンフットプリント」を銀行の貸出金利に連動させ、企業が率先して汚染削減や排出量削減のインセンティブを提供する融資である。
 新区にある江西佳因光電材料有限公司は「トリメチルガリウム製品1kgの炭素フットプリント認証値」を重要指標として申請し、第三者環境評価機関「聯合赤道」の評価を受け、建設銀行からカーボンフットプリント開示支援として1,500万元のローンを受けることに成功した。
 カーボンフットプリント開示にリンクする融資は炭素排出権誓約融資、カーボンニュートラルファンド、カーボンニュートラル信託、グリーン持続可能的な発展連動融資に続いて、赣江新区のカーボンファイナンスにおけるもう一つの大きな革新による成果になる。
2022-3-16 新華財経
http://www.xinhuanet.com/local/2022-03/16/c_1128475231.htm

【海南省】海南国際炭素排出権取引センターが認可された
 3月18日、海南省地方金融監督管理局は、海南炭素排出権取引センター(海炭中心という)が今年下半期に操業を開始する予定と公表。2022年2月7日、海南省政府の同意を得て、同省金融局は「海南国際炭素排出権取引センター有限公司の設立に関する承認」を発行し、三亜に海炭中心の設置に合意した。
2022-3-18 海南省人民政府
https://www.hainan.gov.cn/hainan/tingju/202203/19eaf1b283004947874d696d1e20fda9.shtml

【香港取引所】初の炭素先物ETFを上場
 3月23日、香港取引所は初のカーボン先物ETFである中金碳先物ETFを上場したと発表し、香港に上場する商品ETFの対象がカーボンクレジット商品にさらに拡大される見込みである。
 この新規上場ETFは中国国際金融香港資産管理有限公司が管理して、ICE EUA炭素先物指数(エクストラリターン)をフォローする。
2022-3-28 新浪財経
http://finance.sina.com.cn/esg/investment/2022-03-28/doc-imcwiwss8160011.shtml


(2)-② 地方政府・「3060目標」、その他
【上海証券取引所】「上海証券取引所第14次5ヵ年計画期間のカーボンピークアウト・カーボンニュートラル行動計画」を発表

 3月1日に上海証券取引所は「上海証券取引所第14次5ヵ年計画期間のカーボンピークアウト・カーボンニュートラル行動計画」を発表した。同計画は以下の6つの取り組みを盛り込んだ。①エクイティ融資を最適化し、上場企業の環境情報開示を強化し、企業の低炭素化を推進、②グリーンボンドの発行規模を拡大し、グリーンボンド制度の構築を改善し、商品投資の魅力を向上させる、③グリーンインデックスシステムを改善し、グリーン投資商品の開発を促進し、グリーン投資対象を充実させる、④グリーン金融市場の対外開放を着実に推進し、国際機関のグリーン金融業務に参与し、国際協力を深める、⑤グリーン金融研究とグリーン投資家の育成を強化、グリーン金融宣伝の普及を強化する、⑥省エネ・排出削減強化、グリーン低炭素取引所の建設を促進する。
2022-3-22 中国金融新聞網
https://www.financialnews.com.cn/zq/zj/202203/t20220302_240516.html

【広州炭素取引所と香港取引所】MOUに調印、大湾区と国際炭素市場でのビジネスチャンスを共同で探求へ
 広州炭素排出権取引中心有限公司は香港取引所と炭素金融分野での協力の機会を模索して、グローバル気候変動に共同で対応し、持続可能な発展を促進する覚書を締結したと発表した。
覚書によると、双方は将来に地域炭素市場の深化と発展と大湾区に適用される自主的な排出削減メカニズムの構築を共同で模索する。
 また、双方は夫々の強みを生かし、炭素市場やカーボンファイナンスについて意見交換を行い、国際炭素市場のルール、基準、道筋を積極的に研究する。
2022-3-24 広州炭素排出権取引所
http://www.cnemission.com/article/news/jysdt/202203/20220300002481.shtml

深圳と香港が共同で、中国で製品のカーボンフットプリント表示認証作業を開始
 国家認証認可監督管理委員会はこの程、粤港澳大湾区(深港)が製品のカーボンフットプリント認証業務を行うことを正式に承認した。
 深圳市場監督局が主導して、香港品質保証局等の部門と共同で広東・香港・マカオベーエリア(深圳-香港)計量検査認証発展促進同盟によって、深圳と香港でカーボンフットプリント表示認証を率先して行い、地域のカーボンフットプリント表示共同体系を構築し、統一的なカーボンフットプリント表示制度を実施することを明確した。
 統一されたカーボンフットプリント評価基準体系の構築によって、ベーエリアの産業発展に適したカーボンフットプリント評価方法と基準を提案し、産業のライフサイクルにおける温室効果ガス排出の割合をより明確に理解することができ、産業のグレードアップと産業の構造の最適化を促進し、中国のカーボンフットプリント業務の国際化のさらなる強化に寄与することが期待される。
2022-2-25 中国質量報
http://www.cnca.gov.cn/xwjj/jgdt/202202/t20220225_66024.shtml

(3) 業界・金融機関
【KPMG】龚永德氏、持続可能な発展関連情報開示ガイドラインの検討・導入を早急に完了すると提案 

 中国人民政治協商会議全国委員会委員、KPMG中国の前副会長である龚永徳氏は今年にグリーントピックに焦点を当て、「中国における持続可能な発展報告ガイドラインの検討と導入の加速に関する提案」を提案する予定。現在、多くのA株上場企業が持続可能な発展情報を開示しているが、開示の範囲や精緻さには改善の余地があるとし、関連ガイドラインの検討・導入を加速させることを提言するという。
 企業の情報開示の問題として、まず、開示事項のカバー率が一致していないこと。CSI800の構成企業の2020年度に開示した情報を例にとってみると、二酸化炭素排出量を開示した企業は16.4%にとどまる一方、独立取締役比率を開示した企業は100%であった。
 次に、開示する情報の範囲を拡大する必要がある。例えば、環境関連情報の開示では、2020年にCSI800の構成会社が開示した情報は主に炭素排出量、水使用量、汚染情報に限定された。一方、TCFDが69ヵ国の上場企業1,651社を対象に行った調査では、2020年度に開示された環境項目のうち、取締役会のガバナンスに関する情報を開示した企業は25%にとどまり、リスクと機会に関する情報を開示した企業は52%で、リスクの特定・評価・管理プロセスに関する情報を開示した企業は29%であった。
 最後に、定量的な情報の開示比率を向上させる必要がある。例えば、CSI All-Share Indexの構成企業における炭素排出量の開示率は2020年度で4%となっている。また、TCFDが調査した1,651社の上場企業のうち、2020年にGHG排出量情報を開示したのは37%であった。
2022-3-1 文汇網
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1726064122308477962&wfr=spider&for=pc

【農業銀行】「グリーン金融発展計画(2021-2025)」を発表
 農業銀行はこの程、「グリーン金融発展計画(2021-2025)」を発表した。計画では、グリーン金融の拡大・増加を促進するための重点分野を定めた。クリーンエネルギー、インフラのグリーンアップグレード、省エネ・環境保護、クリーン生産、エコロジー環境、グリーンサービスなど6つのグリーン産業に焦点を当て、支援を拡大することを目指している。
 計画にはグリーンクレジット、グリーンボンド、グリーン投資などの業務を展開し、グリーン直接融資や革新的な業務の供給能力を向上させることを提案している。
 計画ではグリーンクレジット業界の政策と業務資格を改善し、資源保護を強化し、評価・監督メカニズムを最適化し、インセンティブと抑制の措置を実行すると明確化した。
2022-3-1 新華財経
https://www.cnfin.com/kx/detail/20220301/3547965_1.html

【中国科学院】技術による「ダブルカーボン」行動を支援
 中国科学院は3月2日、北京で記者会見を開き、「科学的にカーボンピークアウト・カーボンニュートラルを支援する戦略行動計画」を発表した。
 同計画によると、科学技術の戦略的研究、基礎フロンティアの横断的なイノベーション、コア技術の突破、新技術の示範、人材の支援と育成、国際協力の支援、イノベーションシステムの能力強化、普及活動など、8つの行動が打ち出された。具体的な目標として、
・2025年までに、炭素吸収源のメカニズムを明確にし、炭素源と吸収源のモニタリングとアカウンティングのための科学的方策を構築する。化石エネルギー、再生可能エネルギー、原子力エネルギー、炭素吸収源に関連しコア技術の突破と、重点産業における低炭素技術の総合的な示範を促進する。
・2030年までに、多くの独創的で技術を提案・検証する。再エネを中心としたマルチエネルギー融合技術システムと生態系吸収源強化技術システムを構築し、主要産業の低炭素パターン転化発展のシステムソリューションを構築する。2060年までに、多くの独創的・革新性な技術を生みだし、その応用を実現する。
2022-3-2 中国科学院
https://www.cas.cn/yw/202203/t20220302_4826727.shtml

【中信銀行】中国の銀行で初の「個人炭素アカウント」の内部テストを開始
 中信銀行は個人ユーザー向けに「中信カーボンアカウント」の内部テストを開始したと発表し、1,000名のユーザーを招待してテスト体験してもらった。これは深セン市生態環境局、深セン市銀行保険監督局の指導のもとで、深セン排出権取引所、上海環境エネルギー取引所と協力し、中国の専門組織である中汇信碳資産管理有限公司が共同開発して、国内の銀行として初の個人向け炭素アカウント設定の事業である。
 「中信カーボンアカウント」は中信クレジットカードの「動卡空間」アプリをベースに構築された。ユーザーの承認を得て、個人の低炭素活動データを収集し、個人の炭素排出量を累計して、ユーザーにグリーン・低炭素生活に実現した証明を提供し、「グリーンライフカード」を発行する。「中信カーボンアカウント」の試算によると、中信銀行のクレジットカード利用者は、オンライン金融サービスでの低炭素行動により、毎年200万トン以上の二酸化炭素排出量を削減できるという。ユーザーの炭素排出量削減の市場に大きなポテシャルがあると予測された。
 「中信カーボンアカウント」の炭素排出量削減計算は第三者機関が認めた炭素削減方法論を用いて、炭素削減量を計上して、上海環境エネルギー取引所の専門家が審査・承認したのである。グリーンモビリティ、グリーン消費、グリーンライフなどの省エネ・排出量削減のシナリオに対して、ユーザーはリアルタイムで二酸化炭素削減データを記録・確認することができる。
 また、近日公開予定の一般向けバージョンでは、グリーンモビリティや中古品リサイクルなど、より豊かなグリーンの生活シーンを提供する予定だという。
2022-3-10 深圳新聞網
http://www.sznews.com/news/content/2022-03/10/content_24984857.htm


3. 王の視点
欧米の気候変動関連方策が中国企業への影響

 3月には、気候変動関連で二つのニュースが中国で報道され、注目を集めています。
 一つ目は、2022年3月15日、欧州連合(EU)理事会で開催されたEU27カ国の財務大臣会議において、フランスが提案した「炭素関税」提案が採択されたことです。このニュースが中国では多いに報道されました。欧州諸国は7月に関連事項の詳細を決定し、EUが主導する炭素国境調整メカニズム(CBAM)の実施が近づきつつあると解されているからです。
 二つ目は、2022年3月21日、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に気候関連情報の開示を義務付ける新しい企業気候情報開示提案を公表したことです。 現在はパブコメ中ではありますが、2か月後にSECが最終規則の策定を開始する予定だと伝えられています。
 この二つの報道は、今後、長期間にわたって、中国企業のグローバル活動に大きな影響を及ぼすと見られています。
一つ目の炭素関税について、多くの機関や学者は、CBAMの実施が中国企業によるヨーロッパへの輸出に与える影響を定量的に分析し、欧州輸出が減少していくだろうと予測しています。ネガティブな意見が多いのです。一方、企業の反応をみてみると、驚く程にポジティブに受け入れる姿勢が目立っています。特に鉄鋼業界は、この炭素税ができることで、中国企業の製品コストが40%アップになり、短期的にはデメリットが大きいのですが、長期的にみると、低炭素技術関連の開発、新技術の適用により、鉄鋼業の全体的の競争力が高められ、メリットをもたらすことになると判断しています。また、家電メーカーへの影響も予想されますが、家電メーカーの多くがカーボンニュートラル戦略を取り込むスケジュールを作成し、取り組みを始めているといわれています。
 また、中国政府も対応策を検討しています。炭素排出量会計の方法および製品の二酸化炭素排出量計算に関する標準化作業は、急速に進められており、発電の排出因子の決め方などについても、政府が標準化を主導するようになっています。また、鉄鋼など炭素排出が高い業種について、生産量を抑えるように誘導して、国内企業のグリーン転換を促すようになっています。
 二つ目の米国上場企業の気候関連情報開示について、機関投資家は、気候変動関連リスクの透明性と比較可能性を高め、資本の効率的な配分、競争、公正で効果的であると評価する一方、米国で上場する中国企業にとっては大きなチャレンジだと指摘もしています。具体的には、いくつかのチャレンジがあると分析されています。一つには、米国市場に上場する中国企業にとって、炭素排出情報開示においてTCFD枠組みを使わなければならず、ベンチーマークを明確にしなければならなくなる点です。二つ目は、国内外の投資家が、TCFDフレームワークを使用して個々の株式やポートフォリオの気候リスク分析を行うようになる一方、中国でTCFD提言に賛同している企業はわずか20社程度にとどまり、特に外国人投資家とのコミュニケーションに影響を与える可能性があるといわれています。
 気候変動対応、持続的発展は、世界的な流れとなり、グローバルに活動する中国企業にとっても、避けて通れない道になりつつあります。グローバルマーケットの様々な規制に対応し、技術開発や制度作りに積極的に関与する中で、自社の適応力を高める以外に道はないように思われます。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ