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地域包括ケアシステムの構築状況の見える化に向けた調査研究事業

2022年04月08日 齊木大山崎香織辻本まりえ


*本事業は、令和3年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の目的
 団塊の世代が75歳以上となる次期2024年の法改正・報酬改定及び各地域における第9期介護保険険事業計画では、2025年が目前に迫る中、2025年において達成すべき「地域包括ケアシステム」の構築状況を評価しその達成状況を明らかにする必要がある。また、2022年度以降の各自治体のこれまでの取り組み状況を評価するとともに、2023年の法改正や次期2024年報酬改定及び各地域における第9期介護保険事業計画の策定などの議論に資するよう、地域包括ケアシステムの構築の達成に向けた進捗管理や政策的支援を行っていく必要がある。
 そこで本調査研究事業は、自治体における第9期介護保険事業(支援)計画の策定に資するよう、各自治体におけるこれまでの地域包括ケアシステム構築の取り組みを総括し、今後の施策・事業の見直しに向けた課題を抽出する「点検の枠組みと視点、参考となる指標等」について検討・整理し、自治体職員向けのツールとしてとりまとめることを目的とした。

2.事業概要と主な成果
 各自治体における地域包括ケアシステムの構築状況の振り返りにおいては、地域共生社会の実現はもとより、各地域における人口減少が進展しさまざまなサービスの担い手が一層限られていくことを念頭に、介護・医療・福祉の連携はもとより、生活支援、交通、金融、産業等の多様な分野も含めた地域づくりの視点を持つ必要がある。ただし、地域で活用できる社会資源が限られるなか、各種事業の整備状況・実施状況を評価する“フルセット型の評価”から、地域の住民のニーズと地域が目指す姿(ビジョン)を起点に、各事業が上位の理念や目標の実現にどのような役割を果たしているか、他の事業とどのように連動しているかという“機能の点検”が重要になる。
 既に国からは保険者機能評価指標や地域包括ケア「見える化」システムなどの評価指標が提供されているほか、地域包括ケアシステム構築の参考となる事例集、計画策定時に上位理念に基づいた施策や事業を企画する検討の手引きなど、多くの情報が提供されている。自治体が、地域が目指す姿(ビジョン)を起点にした第9期介護保険事業(支援)計画の策定に反映するためには、これら既存の情報も活用しつつ、これまでの地域包括ケアシステムの構築状況を点検する考え方(枠組みと視点)を整理することが求められる。
 そこで本調査研究事業では以下の検討を実施し、それぞれ検討成果を得た。

①先行文献レビュー
 地域包括ケアシステムに関連する各事業の評価の考え方やその実施方法、地域包括ケアシステムの構築状況を見える化するための指標を開発し、上位理念に基づいて施策や事業を組み立てる考え方等に関する先行文献をレビューし、既存の成果を活用しやすくするために本調査研究事業で取り組むべき課題を特定した。
※レビューで参照した文献は、本調査研究事業報告書の巻末参考資料をご覧ください。

 先行文献レビューおよび検討委員会での議論の結果、これまでに国が整備し示してきた保険者機能評価指標などを活用して補完する観点から、「地域のビジョン(目指す姿=総合計画や基本構想などで掲げられている地域で合意された理念)を起点とする、政策目標の実現に向けて各施策・事業が機能しているかの点検」において自治体が参照できる考え方の整理を、本調査研究事業で検討すべき課題とした。

②効果的な点検の考え方(枠組みと視点)および関連する参考となる指標の整理
 自治体の政策体系(政策‐施策‐事業)の構造、政策評価やインパクト評価で使われる基本的な考え方、保険者機能評価指標などの既に公表・運用されている指標等を踏まえ、複数の自治体を事例とした机上点検も踏まえ、検討委員会での議論を重ね、点検の枠組みと視点をとりまとめた。
 事業レベルの評価については、保険者機能評価指標や地域包括支援センター評価指標などの指標群(set of indicator)が示されていること、また分類を詳細化し過ぎると複数の自治体での適用が困難になることも考慮し、政策と施策との関係性を点検する際に活用できる基本的な枠組みとしてとりまとめた。
 施策レベルの点検の視点については、地域包括ケアシステムの構築で示されている5分野(医療・介護・介護予防・住まい・生活支援)および庁内外連携の体制の整備の観点に対応する構造とした。

点検の枠組みと視点



③自治体向け「地域包括ケアシステムの構築状況の点検ツール」のとりまとめ
 前述①~②の検討にもとづいて、地域包括ケアシステムの構築状況の点検に利用できる枠組みと視点を、自治体向け「地域包括ケアシステムの構築状況の点検ツール」としてとりまとめた。
 なお、本ツールでは、トップマネジメント(部課長級)とミドルマネジメント((課長)補佐・係長級)のそれぞれ向けに、効果的な点検とするために期待される取り組みを分けて記載した点が特徴である。ミドルマネジメント向けに関係各部を巻き込んで点検を実施する具体的な方法と視点を示す一方、トップマネジメント向けには、こうした点検を実施する体制の整備(点検の実施を指示すること、関連部署に対して情報連携の協力を得る可能性があることを依頼すること等)が期待されることを示した。
※点検ツールの内容は、本調査研究事業の報告書をご参照ください。

3.今後の課題
 今後は、本年度に作成した手引き(ツール)を読み解き活用できるように伝達する研修ツール(研修教材とプログラム)を策定・普及する必要がある。
 また、関心を持つ多くの自治体において伴走的支援を実施するとともに、既存の評価指標等のデータを活用しやすくするよう検討する必要がある。さらに、本年度にとりまとめたツールをさらに分かりやすく拡充し、第9期介護保険事業計画の策定に活用できるよう年度末を待たずに公表する必要がある。


※本調査研究事業の詳細につきましては、下記の報告書をご参照ください。
地域包括ケアシステムの構築状況の見える化に向けた調査研究事業報告書
「地域包括ケアシステムの構築状況の点検ツール ~住み慣れた地域で暮らし続けられる社会の実現に向けて~」(PDF:3,947KB)

本件に関するお問い合わせ
創発戦略センター シニアマネジャー 齊木 大
TEL:080-1145-7438   E-mail:saiki.dai@jri.co.jp
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