*本事業は、令和3年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。
1.事業の目的
認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる「共生」社会の実現に向けては、官民での連携、とりわけ、医療や介護の事業者にとどまらない、日常の暮らしを支える小売・交通・金融・生活サービス等の幅広い事業者の主体的な参画が欠かせない。
令和3年度には、「認知症に関する取組を推進する官民協働による協議会(地方版認知症官民協議会)」を設置し、連携・協働を進める経費が地域医療介護総合確保基金の対象事業の一つとして位置付けられ、今後、こうした官民連携の動きが全国に広がっていくことが期待される。
本調査研究では、「地方版認知症官民協議会」の設置が促進され、認知症施策を官民で推進する動きが加速することを目指し、自治体同士の学び合いの機会を提供しつつ、多様な規模の地域・自治体の「官民連携」の取り組みについて調査研究を進めた。一連の取り組みを通じて、小売・交通・金融等の生活に密着する民間事業者との具体的な連携方策のあり方、チームオレンジや本人ミーティング等、既存の認知症施策の取り組みとの連携のあり方等、さまざまな規模の自治体におけるプラットフォーム構築に関する課題やノウハウについても整理した。
2.事業概要
認知症にやさしい地域づくりに関して知見を有する有識者、実務者からなる検討委員会を設置・運営した上で、下記を実施した。
(1) 自治体向けのオンライン勉強会
認知症施策において官民連携での取り組みを進める自治体同士で課題やノウハウを共有し合い、各地域での取り組みを加速させる目的で自治体向けのオンライン勉強会を実施した。
(2)各地域での官民連携プラットフォーム(地方版認知症官民協議会等)の設置・推進支援・調査<モデル事業>
オンライン勉強会に参加した自治体の中で希望する自治体から、一定の要件に基づきながら、検討委員会での議論を経て、以下の自治体を選定し、官民連携の取り組みについて支援を行った。
【取り組み概要】
①富山県(人口約102.8万人、高齢化率32.7%)
企業に向けた認知症の正しい理解の普及啓発
包括連携協定締結企業等と連携した、認知症にやさしい地域づくりの推進
②埼玉県戸田市(人口約13.6万人、高齢化率16.2%)
多様な企業と連携しての認知症の人にやさしいまちづくりの推進
③茨城県土浦市(人口約14.1万人、高齢化率29.2%)
本人・企業・行政の三方よしを目指す「認知症バリアフリーシティつちうら」
本人…社会参加・サービス利用利便性向上
企業…選ばれるサービス開発
行政…認知症バリアフリーなまちづくり
④兵庫県洲本市(人口約4.2万人、高齢化率35.9%)
認知症共生を生活支援体制整備事業の一環と位置付けたまちづくり
⑤鹿児島県錦江町(人口約0.7万人、高齢化率44.4%)
認知症当事者や多様な主体と取り組むまちづくり
また、令和2年度の調査研究対象の京都府、福岡市、大和市、いわき市についても継続的に取り組み状況を調査した。
(3)「地方版認知症官民協議会」等の官民連携プラットフォーム構築の指針・留意点
モデル事業における取り組みのプロセスを通じて、推進にあたっての課題や留意点を整理し、他地域での展開の際のヒントとなるようにポイントを整理・取りまとめを行った。
3.主な事業成果
各自治体の取り組みに関して、以下の視点からその活動内容および示唆を整理した。
・庁内調整、自治体内の推進体制の構築
・認知症当事者の参加、地域の当事者のニーズの把握
・協力企業の募集、声かけの工夫
・既存の認知症施策との関係性
・協議会等の場の運営の工夫
・推進にかかわる予算等の状況
・介護関係者等の協力
4.今後の課題
(1)各モデル自治体の継続的な事例調査
官民連携による認知症にやさしい街づくりは一朝一夕にできるものではなく、複数年にわたっての取り組みが必要だと考えられる。今後の各自治体での活動の結果、どのような官民連携での活動が生まれ、それがその地域に暮らす認知症の人の暮らしをどのように変えていくか、継続的な調査研究を積み重ねていく必要がある。
(2)地方版官民連携協議会
令和3年度より対象事業となった地域医療介護総合確保基金の活用事例やその効果等については別途、調査・検討が必要だと考えられる。
※詳細につきましては、下記の報告書をご参照ください。
⇒報告書

【本件に関するお問い合わせ】
リサーチ・コンサルティング部門 高齢社会イノベーショングループ
部長(プリンシパル) 紀伊信之
TEL:080-1203-5178 E-mail:kii.nobuyuki@jri.co.jp