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リサーチ・フォーカス No.2021-056

若い世代の出生意欲の低下が深刻にー新型コロナが出生意欲のさらなる低下を助長

2022年03月18日 藤波匠


2015 年に約100 万人であったわが国の出生数(日本人)は、わずか6 年で81 万人程度(2021 年見通し)にまで減少した。

2015 年までは▲1%程度の緩やかな減少であったが、この時期は出産期の女性数のすう勢的な減少や婚姻率の低下などの要因が指摘されていた。2016 年以降の急減は、それらに加えて出生率の低下が寄与し、年率▲3.5%の急減となった。

出生数減少の要因を、人口、婚姻率、有配偶出生率に分解すると、依然として人口要因による押し下げ効果が大きいが、その影響度はわずかながら小さくなった。一方、有配偶出生率は、2015 年までは出生数の押し上げ要因であったものが、一転2020年には押し下げ要因となった。

有配偶出生率の低下は、若い世代における出生意欲の低下を反映しているとみられる。

足元の出生意欲の状況は、今夏発表される予定の第16 回「出生動向基本調査(以下調査)」の結果を待たなければならないが、2015 年に実施された第15 回調査の結果にも、出生意欲の低下が急速に進み始めたことを示唆するデータがある。

2015 年調査では、男女とも、未婚者の希望子ども数が2010 年調査(第14 回)より大きく低下していた。この出生意欲が低かった世代が、足元で結婚・出産の中心世代となり、低い有配偶出生率がもたらされたと考えられる。

有配偶出生率などがこのままの傾向で低下すると、2025 年のわが国出生数は、2020年対比▲13%減のおよそ73 万人となると試算される。

2020 年以降は、新型コロナによる雇用に対する懸念や出会いの場の喪失など、出生意欲をさらに押し下げかねない状況が続いており、出生数はさらに下振れすることも懸念される。

「出生意欲の低下」に対しては、若い世代が子を産み・育てたいと思える社会を作ることが不可欠であり、子育てしやすい環境の整備に重点を置いていたこれまでの少子化対策の在り方を見直すことが必要となる。

折しも、新型コロナ禍によって社会的な関係性が希薄化した一方で、家族のつながりを再確認した人も多かったのではないだろうか。新型コロナ禍による、国民の精神的な変化を、出生意欲の回復につなげていくという発想も必要となろう。

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