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リサーチ・フォーカス No.2021-055

量的引き締め(QT)局面に入ったイングランド銀行-透明なリスク管理の枠組みと政府との連携-

2022年03月15日 河村小百合


コロナ危機後の高インフレ局面への急転換に直面し、イングランド銀行(BOE)が主要中銀の先頭に立つ形で金融政策運営の正常化に着手している。昨年末以降の二度の利上げにとどまらず、去る3 月7日には英国債の満期到来分の再投資を見送る形(「満期落ち」)での資産縮小(QT)にも着手したほか、国債の中途売却も実施する方針である。

BOEが機を逃さず正常化を進めることができている背景としては、ベイリー総裁が、コロナ危機局面の初期から、次:なる危機時の対応力を十分に確保するうえでの正常化の必要性を認識し、対外的にも積極的に情報発信する一方、同総裁のリーダーシップのもと、BOE 内部でも早い時期から検討を進め、2021 年夏にはコロナ危機後の正常化策を具体的に決定していたことが大きい。

コロナ危機下で未曽有の規模の資産買い入れを実施した中央銀行は、正常化局面で多くの新たな課題を抱える。金融政策の実務面では、①“超低金利局面”から“通常のプラス金利”局面に戻る際、マネタリーベースとマネーストックを関係づける「信用乗数効果」が復活する段階を見極められるか、②「量的引き締め」(QT)を金融政策手法としてどのように位置づけるかといった課題がある。また政府との関係の面では、③政府の財政運営や国債管理政策との兼ね合いをいかにとるかや、④中央銀行の財務悪化にいかに対応し乗り切るか、といった課題もある。

BOEの場合、金融政策の実務面での課題について、早い時期から検討に取り組んできているほか、従前から政府との関係が緊密で、正常化の過程でBOEが被る損失を政府が補償する枠組みも、初期段階から透明性の高い形で整えられている。

わが国では日銀が、BOEをはるかに上回る大きなリスクを抱え、先行きの金融政策を機動的に運営するうえでの足かせともなりかねない。わが国全体として、日銀が抱えるリスクの大きさに正面から向き合ったうえで、日銀が正常化できる枠組みを整え、本腰を入れた財政再建と合わせて取り組んでいくことが求められている。


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