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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.22,No.84

ASEAN 諸国におけるグリーン・ファイナンスの進展

2022年02月14日 清水聡


温室効果ガス(GHG)の排出量を削減し、気候変動の緩和に努めることは、喫緊の課題である。その具体的手段は、①エネルギー源を高炭素のものから低炭素のものに転換すること、②製造・建設・運輸などの各分野でエネルギー効率を改善すること、③土地の利用方法を変更すること、などである。こうした脱炭素の活動を支援するのが、グリーン・ファイナンスである。ASEAN地域では、2016~2030年において3兆ドルのグリーン投資が必要になるという推計もある。この膨大な資金需要を満たすためには、財政資金のみでは不十分であり、民間資金をいかに動員するかが大きな課題となる。

東南アジアは、気候変動がもたらす自然災害や気温上昇・海面上昇などに対し、特に脆弱な地域である。したがって、GHG排出量の削減に尽力する意義は大きい。アジアの一次エネルギーに占める化石燃料の比率は高く、これを転換することが不可欠である。また、インドネシアを中心に、森林減少への対処も重要である。

気候変動問題は極めて深刻となっているが、さらに2020年当初より新型コロナウイルスによるパンデミックが世界経済に大きなダメージを与え、サステナブル・ファイナンスの重要性が一段と強調されたと考えられる。ASEAN 6カ国においても、中央銀行や証券取引所などが中心となり、2010年以降、サステナブル・ファイナンスの推進のための枠組み作りが進められている。その進捗状況は国により様々であるが、政策実施のロードマップ作り、実際の運営を担当するグループの設置、責任融資のガイドラインの導入、気候・環境リスク管理のルール導入、グリーンボンド発行に関するインセンティブの付与、情報開示ルールの導入やタクソノミーの検討など、多岐にわたる取り組みが進行している。

金融取引がグローバル化しているため、国際的なルールが出来ればASEAN諸国の銀行にも影響が及ぶことは避けられない。このため、サステナブル・バンキングの拡大に向けた取り組みが進んでいるが、シンガポールが先行しているものの、他はキャッチアップの途上にあるといえよう。

グリーンボンドに関しても、世界の中でASEAN地域における発行額は小さく、今後の市場拡大やサステナビリティボンドなどへの多様化が期待される。さらに、ESG投資に関しても、市場整備(投資商品の多様化など)や投資家自身の社内組織の変革を着実に進め、投資を拡大することが求められる。

総じて、ASEAN諸国におけるグリーン・ファイナンスは発展途上にある。実体経済面における脱炭素の動きが遅れていること、各国の経済・金融発展度が様々であることなども、障害となる可能性がある。今後、政府や中央銀行がリーダーシップを発揮して体制の構築に努め、資金提供者とともに専門性の向上を図り、ASEAN地域全体で発展を加速させることが期待される。
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