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植物肉は「次世代型がんもどき」~植物肉と食肉の相互補完関係の構築~

2022年01月12日 三輪泰史


 SDGsへの関心の高まりを受けてフードテックという言葉が注目を集めているが、その代表的なものとして植物肉(代替肉の一種)が挙げられる。植物肉は植物タンパク質を家畜の肉を模して加工したもので、主な原材料には大豆、小麦、エンドウ豆、ソラマメなどがある。最近は小売店や焼肉、ハンバーガー、麺類等の外食店で用いられるケースが増加しており、徐々に市民権を得ている状況である。植物肉には、ヴィーガン、ベジタリアン等の菜食主義の消費者対応のため動物由来の物質を添加していないものと、一般消費者向けに添加しているものとがある。ヘルシー志向や高齢者の栄養改善の観点から高タンパク食が注目されており、市場拡大が期待されている。

 植物肉は環境問題の観点でも重要視されている。植物肉の環境に対する効果は主に2つある。一つ目が、温室効果ガスの排出抑制である。従来の畜産においては、牛のゲップや排せつ物等から多くの温室効果ガスが排出されている。植物肉の方が温室効果ガスの排出量が大幅に少ないため、畜産物の一部を植物肉に切り替えると、タンパク質等の供給量を維持しつつ、排出係数の差分で温室効果ガスの排出を削減できる。二つ目が、植物肉の高い生産性による農地の効率的利用である。畜産物の生産には多くの餌が必要であり、一般的な畜産では、1キログラムの食肉を生産するために牛肉で11キログラム、豚肉で7キログラム、鶏肉で4キログラムの穀物が消費されるため、広大な飼料生産用の農地が必要となる。他方で、植物肉は大豆等のタンパク質をそのまま加工できるため、耕地面積あたりの生産量が高い。世界的な人口増加と経済発展を踏まえてタンパク質需要が高まる中、生産効率のよい植物肉の生産拡大により、栄養状態の改善や飢餓リスクの低減と、熱帯雨林等の自然環境の保全に貢献すると期待されている。

 なお、代替肉という表現が一般的に使用されてはいるが、代替肉は食肉と完全に置き換わるものではないことに注意しなければならない。食肉と代替肉にはそれぞれ長所・短所があり、用途や消費者の嗜好に応じて使い分けられるものである。その関係性は牛乳と豆乳、バターとマーガリン等に近い。健康志向等からソイラテのような豆乳を使用した飲料が人気だが、決して従来の牛乳を用いた飲料がなくならないのと同じである。

 日本では古くより「がんもどき」のような高たんぱくで食べ応えのある植物性食材が活用され、精進料理として発展してきた。がんもどきは名前の通り、雁(がん)の肉に似せて作られた食品(注)で、「元祖代替肉」ともいえる存在である。日本の食生活、肉類の消費量を鑑みると、植物肉は豆腐、油揚げ、湯葉、がんもどきといった大豆商品の延長線上にあると考えた方が受け入れやすい消費者もいるだろう。食肉と代替肉の対立をあおるのではなく、がんもどきのように自然な形で市場浸透し、両者が相互補完する形でより豊かな食が形成されることが望まれる。

(注)諸説あり


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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