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リサーチ・アイ No.2021-060

地方銀行の越境融資に伴うリスクとビジネス機会

2022年01月04日 大嶋秀雄


近年、地銀の越境融資(本社所在都道府県外の融資)が増加。日銀の調査では、コロナ禍でも越境融資は他行メイン先を中心に増加し、地銀の企業向け貸出に占める割合は約4割に(2020年度)。低金利環境の長期化等に伴う収益減少を受けた、積極的な新規貸出先の開拓が主因。

越境融資は、リスクとビジネス機会の両面をみることが必要。主なリスクとして、①新規取引獲得のために金利・担保等の貸出条件が緩和的になりやすい、②取引関係が希薄で情報収集が難しく、与信管理が他行動向確認などにとどまりがち、③知名度のある企業向けの貸出が中心で、1社あたり貸出額が大きく(県内取引先の3~4倍)、焦げ付き時に多額の損失を被りやすい、④地場大手企業の倒産等が別の地域の金融に悪影響を及ぼす恐れがある、等を指摘可能。また、地銀間の競争環境の激化につながり、地銀の収益力低下の一因との指摘も。

一方、越境融資のビジネス機会も無視すべきではなく、具体的に、①他県有力企業との取引獲得、②越境融資先と地元企業のビジネスマッチング等を通じた取引深耕、③県外地銀との連携(シンジケート・ローン等)による大手企業などへの支援の幅の広がり、等を指摘可能。近年の地銀におけるアライアンス形成の増加も、③を通じた越境融資の増加につながっている可能性。

地域との強固なネットワークを強みとする地銀が越境融資に傾斜して、地元との関係が希薄化すれば、競争力が低下する事態に。地銀は、低金利競争につながるような単純な貸出増強のための越境融資は回避し、与信管理の強化やフォワードルッキングな貸倒引当金の計上などで越境融資に伴うリスクへの備えを万全としつつ、収益力強化に資する形での取り組みに注力することが肝要。


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