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リサーチ・フォーカス No.2021-044

大型補正予算と財政運営の課題

2021年12月20日 蜂屋勝弘


去る12 月15 日、一般会計歳出が約36 兆円規模に達する2021 年度の補正予算案が衆議院を通過し、12 月20 日にも参院で可決され、成立する見通しとなっている。この補正予算は、11 月19 日に閣議決定された、過去最高額の55.7 兆円の財政支出を伴う「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を受けて組まれたもので、そのうちの31.6 兆円が国の一般会計の支出として、この補正予算に計上されている。

補正後の2021 年度一般会計歳出は142.6 兆円に膨張し、相次ぐ新型コロナ感染症対策で増加した2020 年度の175.7 兆円(補正後)に次ぐ規模となる。一方、歳入は、税収の上振れ分や2020 年度の決算剰余金など合計14 兆円程度の増加にとどまった。結果、補正後の財政赤字は65.7 兆円と、当初予算対比22.1 兆円拡大した。その大半は新規国債の発行によって賄われ、負担は後の世代に付け回されることになる。

補正予算については、これまでも災害復旧や景気対策等に活用されてきたものの、シーリングの対象にならないことなどから、財政管理運営上の抜け穴となっているとの見方もある。補正予算の編成にあたっては、個々の経費を計上する必要性や緊急性をしっかり吟味することが求められる。

3次にわたる補正予算で歳出が大幅に積み増された2020 年度に、決算で過去最高の30.8 兆円もの繰越金が発生したことを踏まえると、今回も同様の事態が懸念される。急変する感染状況等は見通しづらく、状況によっては重要度や緊急度の下がった事業が見直されることなく繰り越されてしまう恐れがある。

科学技術立国や地方の活性化・デジタル化などの成長戦略や労働・賃金・人材対策などの分配戦略は、予算をつけるだけでなく、既存の制度の見直しなどにも継続的に取り組むことが重要と考えられる。ゆえに、補正予算よりもむしろ、当初予算で計画的に財源を確保することが望ましい。また、経済対策の目玉の一つである「子育て世帯に対する給付」については、政策の目的が、新型コロナ禍による困窮者の救済か、子育て支援かはっきりせず、政策そのものの妥当性に疑問が残る。

また、財源の面でも、①新型コロナ感染症対策で増加した政府債務の償還のために、東日本大震災からの復興と同様に「特別税」を時限的に導入するほか、②雇用調整助成金や看護・介護等関係者の収入増の財源は一般財源ではなく、本来の姿である各社会保障制度内でのやりくりによって賄うなど、安易に将来に付け回さない姿勢が求められる。

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