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リサーチ・フォーカス No.2021-042

日米インフレ格差拡大も円高圧力弱く―サービスが主導する物価変動が背景―

2021年12月14日 西岡慎一


日米のインフレ格差が拡大している。消費者物価の前年比でみた日米の差は約6%ポイントと40年ぶりの高水準にあるが、これには、需給ひっ迫の影響で価格が急騰している個別品目の特殊な動きが作用している面も大きい。基調としてのインフレ格差はコロナ前から1%ポイントほどのマイルドな拡大にとどまっている。

もっとも、今後はサービス主導でインフレ格差が拡大する可能性がある。米国では、住宅価格が高騰しており、家賃が加速する公算が大きい。深刻な人手不足で賃金の伸びも高まっており、サービス価格に波及すると考えられる。日本でも住宅価格が上昇しているほか、人手不足が強まりつつあるが、わが国に特徴的な取引慣行や雇用慣行を背景に、サービス価格は伸び悩むとみられる。

一般に、米国物価の上昇によりインフレ格差が拡大すると、短期的には金利差の拡大で円安が生じ(金利平価)、中長期的には一物一価が成立するよう円高が生じやすい(購買力平価)。しかしながら、サービス主導のインフレ格差は円高への調整圧力が弱いことから、今後、円安地合いが続く可能性がある。この背景には、サービス市場では貿易取引などを通じた価格裁定の機会が乏しく、購買力平価が成立しにくい点が挙げられる。実際、サービス価格で測った購買力平価は、財と異なり為替レートと連動しておらず、一物一価が成立していない。近年、日米サービス価格の不均衡は拡大しており、足元で米国は日本の1.7倍に達する。

円安によるメリットの享受は、グローバル企業など海外への投資主体に偏る傾向にある。一方、経済全体でみた輸入支払い負担は増加しているほか、海外への渡航者が現地の高物価に直面する機会が増えている。多くの企業や家計で、以前よりも円安によるデメリットが増す傾向にある点に注意を要する。


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