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リサーチ・フォーカス No.2021-038

調剤報酬の国際比較― わが国の技術料・薬価差益は対GDP比で英・独の3倍 ―

2021年11月22日 成瀬道紀


処方薬は、病院・診療所の窓口で直接受け取る場合(院内処方)と、そこで発行された処方箋を院外の薬局に提示し受け取る場合(院外処方)の2通りがある。院外処方の調剤や服薬指導などの技術料は、院内処方の場合に比べて高く設定されており、コストに見合ったメリットがあるのか厳しい視線が注がれている。本稿は、技術料など薬局にかかるコストを英国・ドイツと比較することで、その妥当性の検証を試みる。なお、薬局の収入には、薬の販売価格と仕入価格の差である薬価差益もあるため、薬価差益も併せて考える。

わが国の調剤に関する技術料の総額は、2001 年から2019 年にかけて1.9 倍に増加している。増加要因は、1処方当たりの平均単価の上昇である。その背景には、政府の医薬分業推進政策のもと、相対的に単価が高い院外処方の比率が上昇したことがある。

わが国の薬局の技術料と薬価差益のGDP比は0.43%と、イングランド(同0.14%)、ドイツ(同0.16%)と比べて突出して高い。こうした違いが生じる原因として次の3点が指摘できる。第1に、人口当たりの薬局数・薬剤師数の過剰ともいえる多さである。第2に、一人当たりの薬剤数の多さであり、家庭医制の不在に伴うわが国の外来受診回数の多さが関連している可能性がある。第3に、1剤当たりの調剤コストの高さである。手間のかかる計数調剤、IT化の後れなど、わが国の薬局業務に非効率な部分があり、コストを押し上げている可能性がある。

こうした事実を踏まえ、今後議論を進めていくうえでのポイントとして4点を挙げることができる。第1に、薬剤数そのものの抑制である。第2に、薬局が提供するサービス内容の点検である。第3に、IT化推進はもちろん、薬局の統廃合も含めた業務効率化の検討である。第4に、上記の議論や政策評価を適切に行うためのエビデンスの充実である。


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