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リサーチ・フォーカス No.2021-034

なぜ、女性は東京を目指すのか ―女性活躍推進策による流出抑止効果は限定的―

2021年11月10日 藤波匠


東京圏の転入超過数は、2009年以降、女性が男性を上回って推移している。コロナ禍にあって東京圏への転入超過が急減する状況下でも、こうした傾向に変化はみられない。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」においては、女性の地方からの流出を問題と認識しており、女性活躍推進策などによって各地への定着を図っているが、効果は上がっていない。そこで本レポートでは、女性を取り巻く地域特性を、都道府県別データによる主成分分析によって見出された『仕事に対する意識』と『女性活躍指数』の2軸によって概観した。

『仕事に対する意識』は、「賃金水準」や「大卒者の人口比率」、「勤続年数」、「公務員比率」などによってキャリア志向と安定志向に大別した。東京など大都市は「賃金水準」が高く、「大卒者の人口比率」が高いキャリア志向であり、地方の各県は「公務員比率」が高く、「勤続年数」が長い安定志向であることが観察された。

『女性活躍指数』は、「母子世帯比率」や「正規雇用比率」、「労働力率」、「保育所の余裕度」、「三世代同居比率」などによって評価した。東京都のほか、北陸3県(富山県、石川県、福井県)などは、女性の対外的な活動の制約が小さいことが示唆された。暮らしやすさのランキングでたびたび上位に位置づけられる北陸3県は、賃金水準が低く、決してキャリア志向とは言えないものの、女性の対外的な活動の制約は小さく、多くの女性が同じ職場で長く働く傾向にある。

主成分分析により求められた2つの評価軸と各地の転入超過率の関係をみると、『仕事に対する意識』と各地の女性の転入超過率の相関は高く、女性の人口移動は、キャリア志向の高い地域に引っぱられ、逆に安定志向を示す指標の高い地域から流出している。

一方、『女性活躍指数』を左右する各指数は、人口移動に与える影響が相対的に小さい。すなわち、地方創生戦略の柱の一つとして、女性の地元定着を促すため、各地で女性の活躍推進策が取り組まれているが、そうした取り組みは、定着した女性の暮らしやすさを高めるものの、女性の流出抑止効果は限定的と考えられる。質の高い雇用があってこそ、女性活躍の制約の小ささが生かされる。

女性の方が、東京圏の転入超過数が多い主因は、女性の高学歴化に伴うキャリア志向の上昇にあると考えられる。4年制大学への女性の進学率は51%で、引き続き上昇傾向にあり、早晩55%程度で横ばいの男性と同水準になる可能性もある。近年、東京などに拠点を構える大企業を中心に、IT分野などにおける高度人材の獲得競争が生じている。高度人材市場の過熱は、男性に限らず女性にまで広がりをみせており、コロナ禍にあっても、大都市における女性の正規雇用は堅調に推移した。

高賃金の大卒雇用機会が多い東京圏の女性吸引力は、その核となっている東京都の女性活躍制約の小ささも手伝って、今後一層高まることが予想される。地方からの人口流出を抑制するためには、大卒が若い世代の半数を超え、産業構造が大きく変わろうとしている時代に即した、相応の知識・スキルを身につけた女性を高度人材としてしっかりと処遇できる雇用機会を創出する地域産業戦略が不可欠と言えよう。


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