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「グリーンライフポイント」において評価される環境配慮行動

2021年10月26日 亀崎惇之介


 2021年8月末、環境省は来年度予算の概算要求に「食とくらしの『グリーンライフポイント』推進事業」を盛り込んだ。「グリーンライフポイント」とは、消費者による環境に配慮した行動(環境配慮行動)を促進するため、金銭的インセンティブとしてポイントを付与するという新しい取り組みである。政府として、こうしたインセンティブの導入を通じて消費者の環境意識を高め、環境関連分野で進んだ取り組みを行う企業や地域を需要サイドから支援しようとする意図だろう。 

 さて、環境配慮行動と評価される行動とはどういったものになるのだろうか。環境省が作成した「食とくらしの『グリーンライフポイント』推進事業」に関する資料(注1)では、グリーンライフポイントの対象は、「ゼロカーボンアクション30等の省CO2、食の地産地消、サーキュラーエコノミー等のライフスタイルに関連するあらゆる環境配慮行動」と説明されている。

 「ゼロカーボンアクション30」は、6月に公表された「地域脱炭素ロードマップ」(注2)の中に記載されている。衣食住・移動・買い物など日常生活における脱炭素に資する行動とそのメリットを整理したリストで、具体的なアクションとして、再生可能エネルギーの利用、スマートムーブ(徒歩、自転車、公共交通機関での移動)等、30の行動が掲げられている。なかには、節電、節水、省エネ家電の導入、食べ物を食べ残さない等、既に一般的に認知もしくは定着しているように見受けられる行動についても記載がされている。

 ある程度普及しているこうした行動を盛り込むことに異議を唱えるわけではないが、注意が必要となるのは、グリーンボンドやその他サステナビリティを意識した資金調達において「ウォッシュ」でないかの検証が必要となることと同様に、その行動が本当に全体として脱炭素化に貢献しているかどうかを確認しなければならない点であろう。

 例えば、「ゼロカーボンアクション30」では食に関連するアクションとして、外食時に食べ残した料理を持ち帰る、という食品ロス削減に関する例が挙がっている。この場合、持ち帰る際に利用する容器がプラスチック製でないなら、海洋プラスチックごみ問題に悪影響を及ぼす可能性がある。あるいは、電力消費のピーク時における節電は発電量の削減に資するものの、夜間など電力消費が落ち着いている時間帯では節電が脱炭素にもたらす効果はごく僅かとなる。「ゼロカーボンアクション30」に掲げられている行動以外にも、「環境に配慮した行動」に見えても、実は悪影響をはらむケースや実質的に効果を伴わないケースは少なからず考えられるだろう。

 いまのところ環境省も、こうしたケースを取り除くため、取り組みを行う企業や地域に効果検証に必要な実績等を報告することを義務付ける方針としている。ただ、効果検証自体は当該取り組みが終了した後に行われて、先にポイントだけが配布、利用されてしまう惧れもある。消費行動が定着せず推進事業終了後に元に戻ってしまっては意味がない。消費者が自分自身でその行動が本当に環境配慮行動と言えるかどうかを判断できるように啓発活動や統合的な環境教育を、同時に実施していくことが望ましいだろう。

(注1)https://www.env.go.jp/guide/budget/r04/r04juten-sesakushu/1-1_12.pdf
(注2)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/datsutanso/pdf/20210609_chiiki_roadmap.pdf


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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