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リサーチ・レポート No.2021-015

恒大集団が示す中国成長パターンの行き詰まり ―不動産税と相続税の本格導入が鍵に-

2021年10月12日 三浦有史


恒大集団の社債に対するデフォルト懸念が再燃し、中国および世界経済の先行きに対する不安が高まっている。同集団は売上と販売面積で中国の不動産開発業界2 位の大企業であり、債務残高もGDP の2.0%に達している。

政府は、①不動産開発業の過剰債務体質が深刻であること、②中国経済に占める同業の割合が高いこと、③同業の債務返済能力の低下は金融システムに影響を及ぼしかねないこと、④住宅需要は投機によって支えられており、不動産市場は価格変動に対して脆弱であること、⑤住宅の開発・販売が円滑に進むか否かが国民生活に大きな影響を与えることから、恒大集団の経営破たんを傍観しない見込みである。

ただし、過剰債務に対する中国政府の介入はデフォルトを回避するための事前介入ではなく、経営責任を明確にしたうえで、破たんの影響が広い範囲に及ばないようにするデフォルト後の事後介入になると思われる。

すでに、政府は想定を上回る不動産市場の過熱に危機感を高め、流入資金を抑制している。銀行に対する規制として導入されたのが不動産関連融資の総量規制、大手不動産開発企業に債務削減を促す目的で導入されたのが「三道紅線」で、それぞれ一定の成果を上げている。住宅価格も2021 年後半に入り、落ち着きをみせ始めた。

中国ではこれまで、住宅価格の高騰が経済成長の足枷になることはなかった。しかし、近時の中国はこの経験則が当てはまらない状況にある。住宅価格のさらなる上昇を見込むのは非現実的であること、また、都市化のペースダウンが見込まれることから、不動産をドライバーとする従来の成長パターンに回帰することは難しい。

中国が長期停滞に陥らないためには、投機目的の需要を排除することで住宅価格を抑制する必要がある。政府が検討している不動産税や相続税の導入は市場の健全化はもちろん、資産格差の是正、さらには、格差の世代間継承を防ぐ効果があり、習近平政権が強調する「共同富裕」に寄与するはずであるが、先行きは不透明である。


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