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中国グリーン金融月報【2021年9月号】

2021年10月11日 王婷


「中国グリーン金融月報」9月号をお届けします。

1.今月のトピックス 
【グリーンボンド標準委員会】グリーンボンド評価・認証機関の初の自主規制文書を発表
 9月24日、グリーンボンド標準委員会はグリーンボンド業界の自主規制と規範確立を推進するため、「グリーンボンド評価・認証機関市場化評価操作細則(試行)」及び評価基準、資料リストなどの付属文書を発表した。これは中国におけるグリーンボンドの評価・認証機関に対する初の規制文書となった。
 この「操作細則」と付属文書では、審査・認証機関の行動を下記の3つの観点から規制することに重点を置き、審査・認証機関が専門的、規範的、かつ独立的に業務を遂行するように求めている。
 その内容は、多面的に実務能力の基準を定量化し、審査・認証機関の実務レベルを反映すること、②多元性を評価機関に導入し、「市場の問題、市場での議論、市場での決定」の原則に従うこと、③多方面での実務検査を強化し、規範的に審査・認証業務が遂行されること、である。
 この規制文書の発表により、国際市場における中国グリーンボンドのブランドと影響力の構築に寄与すると考えられる。
2021-9-24 上海証券報 http://news.cnstock.com/news,bwkx-202109-4760187.htm
コメント:中国では、2015年のグリーンボンド市場の立ち上がり以後、近年、その規模は急速な発展を遂げ、現在米国に次ぐ世界第2のグリーンボンド市場を有するまでになった。ただ、グリーンボンド市場における評価・認証について、関連する統一基準がない、情報開示が不十分、評価・認証に関する規制がないなどの課題があった。
 2017年に中国人民銀行及び証券取引管理監督委員会が「グリーンボンド評価・認証実務ガイドライン(暫定版)」を作成、グリーンボンド基準委員会が設立され、グリーンボンド市場における評価・認証機関の自主規制管理を提唱した。その後、20のグリーンボンド評価・認証機関が承認されたが、認証機関の属性が多様で、認証レベルにばらつきがあり、管理が不十分で、権利・責任・義務が不明確などの課題が残った。
 グリーンボンドに関する第三者評価・認証の自主規制管理の強化は、国内外の市場におけるグリーンボンドの評価・認証の品質と信頼性を向上させ、グリーンボンド市場の長期的かつ健全で規制された発展に寄与することが期待されている。


2.今月のニュース
(1)-① 中央政府・グリーン金融
【国務院】「生態保護補償制度の改革の深化に関する意見」を発表
 中国共産党中央委員会弁公室および国務院弁公室は、「生態保護補償制度の改革の深化に関する意見」を発表した。
 「生態の保護と補償制度を強化し、自然を尊重し、自然に適合し、自然を保護するという社会全体のコンセンサスと行動意識の形成を促進する」、「カーボンピークアウトとカーボンニュートラルに取り組み、環境に配慮する低炭素開発を推進し、グリーン・低炭素発展を促進し、経済社会発展のグリーン化への転換、人と自然が共生する近代化を構築する」を大方針とし、2025年と2035年までの達成目標が定められた。
 同意見においては、市場取引メカニズムの改善について触れられ、「合理的かつ科学的に総量を規制することを前提に、水利権、汚染排出権、炭素排出権の初期配分システムを構築。エネルギー使用権と炭素排出権取引市場の建設を加速する。自主的排出削減メカニズム(CCER)を生かし、炭素排出権のオフセットメカニズムを完備し、林業、再エネ、メタン利用などの分野で、様々な生態系や社会的利益をもたらすCCERプロジェクトを国内炭素排出権取引市場に組み入れると同時に、資金調達手段を拡大する。水利権、汚染排出権、炭素排出権などの資源・環境権益に基づく金融商品の研究開発、グリーン株価指数の構築、炭素排出権先物取引の発展を進める」と明記した。
2021-9-13 北極星電力網 https://news.bjx.com.cn/html/20210913/1176382.shtml

【生態環境部】国家自主貢献プロジェクトデーターベースの構築を推進
 先ごろ、深圳市生態環境局で気候変動対応国家自主貢献プロジェクトデーターベース建設に関する検討会が開催された。生態環境部気候変化司の李高司長は、グリーン資金とグリーンプロジェクトに関して、金融機関と企業のミスマッチを解消するため、「国家自主貢献目標の実施を指導・促進すべく、我々は国家自主貢献重点プロジェクトベースの建設を積極的に推進していく」、対象となるプロジェクトの選定にあたっては、「気候変動の影響に注目したもの、それに見合った社会的影響を与えるもの、一定規模の資金を必要なものという3点を明確にすべきだ」と強調した。
 深圳市生態環境局の副局長である文忠氏は、データベースの構築において、国際基準に沿って、気候変動対応国家自主貢献プロジェクトデータベースの構築プログラムやプロジェクトの評価基準を策定し、金融機関や業界団体、企業と連携して、典型的なモデルプロジェクトを審査していることを説明した。
2021-9-22 每日経済新聞 http://finance.sina.com.cn/roll/2021-09-22/doc-iktzscyx5739966.shtml

【中国銀行保険管理監督委員会】 保険会社のESG投資ガイドラインの研究開発を推進中
 中国銀行保険管理監督委員会は、保険資金のESG投資に関するガイドラインの策定に取り組んでおり、商品設計、投資プロセス、リスク識別、デューデリジェンス管理、情報開示、自主規制管理などの関連原則や要求事項を明確するという。保険資金がESG投資コンセプトを確立し、ESG投資をよりよく推進することを目指すとした。
2021-9-18 中国工商銀行ホームページ http://www.icbc.com.cn/icbc/%E7%BD%91%E4%B8%8A%E7%90%86%E8%B4%A2/%E4%B8%93%E5%AE%B6%E8%A7%86%E7%82%B9/%E6%9D%8E%E8%87%B4%E9%B8%BF/%E9%93%B6%E4%BF%9D%E7%9B%91%E4%BC%9A%E6%AD%A3%E5%9C%A8%E6%8A%93%E7%B4%A7%E6%8E%A8%E8%BF%9B%E9%99%A9%E8%B5%84ESG%E6%8A%95%E8%B5%84%E6%8C%87%E5%BC%95%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%88%B6%E5%AE%9A%E5%B7%A5%E4%BD%9C.htm


(1)-② 中央政府・「3060目標」、その他
【中央政府】習近平:中国国外での新規石炭発電プロジェクトは行わない
 習近平国家主席は、21日に開催された第76回国連総会の一般討論にビデオメッセージで出席し、演説を行った。「中国は、2030年までにカーボンピークアウトを、2060年までにカーボンニュートラルを達成するために努力する。これには大変な努力が必要だが、私たちは最大限の努力をする」と述べた。また、「中国は発展途上国のエネルギーのグリーン化、低炭素化を強力に支援し、中国国外で新たな石炭発電プロジェクトを建設することはしない」と表明した。
2021-9-21 中国青年報 https://baijiahao.baidu.com/s?id=1711558655573581672&wfr=spider&for=pc

【国家発展改革委員会】中央予算23億元で省エネ・CO2削減を支援
 9月1日に、国家発展改革委員会が発表した「汚染防止及び省エネ・二酸化炭素削減に関する中央予算投資特別管理弁法」によると、国家発展改革委員会は、23億元の中央予算投資を承認した。重点産業分野の省エネ炭素排出削減改修、工業団地のエネルギー使用最適化、炭素削減技術革新の実証、都市・農村建設の低炭素化転換、資源再生、海水淡化などの重点プロジェクトを支援するという。重点地域としては、北京、天津、河北、長江経済ベルト、黄河流域、広東・香港・マカオのベイエリア、国家生態文明試験区等の重点地域を優先する。
2021-9-3 財新網 https://www.caixin.com/2021-09-03/101768159.html

【農業農村部】「第14次5ヵ年計画における全国農業グリーン発展計画」を発表
 9月9日に、農業農村部、国家発展改革委員会、科学技術部、自然資源部、生態環境部、国家林業草原局は共同で「第14次5ヵ年計画における全国農業グリーン発展計画」を発表した。これは中国初のグリーン農業発展計画である。
 2025年までに、農業資源の利用レベルの向上、産地の環境品質の向上、農業生態系の向上、グリーン製品の供給量の増加、炭素排出削減と炭素貯留能力の向上を目標とする。
 農業資源の保護と利用の強化、農業表面汚染の防止と管理の強化、農業生態の保護と回復の強化、グリーン低炭素な農業産業チェーンの構築など「三強一建」を重要任務として定めた。また、グリーン農業開発技術の推進力を強化するとともに、農業グリーン発展の制度的メカニズムを高めるといった、技術と制度の2つの推進力を強化すると提唱した。
2021-09-09 農業農村部ホームページ http://www.gov.cn/xinwen/2021-09/09/content_5636345.htm

【国家発改委】「エネルギー消費強度と総量の二重抑制制度改善方案」を発表
 9月11日、国家発改委は「エネルギー消費強度と総量二重抑制制度改善方案」を発表した。エネルギー消費強度と総量の二重抑制について、2025年、2030年、2035年までの目標が定められた。
 「方案」において、エネルギー消費を削減し再エネ消費量を増やすよう地方に奨励し、エネルギー消費量指標の市場取引を促進し、全国エネルギー利用権取引市場の構築を加速し、エネルギー消費総量が余る地方から消費量指標を有償で購入することを提案。国全体では、重点プロジェクトのエネルギー消費を統一に調整する。重点プロジェクトに対しては、年次及び5ヵ年計画期間中の、エネルギー消費強度と総量の抑制の実績評価を免除するとの措置が定められた。
2021-9-16 国家発改委員会 https://www.ndrc.gov.cn/xwdt/tzgg/202109/t20210916_1296857.html?code=&state=123

【生態環境部】炭素モニタリング・評価モデル事業を展開
 9月23日に、生態環境部は汚染削減と二酸化炭素削減の相乗効果を支援するため、「二酸化炭素のモニタリングと評価のモデル事業活動方案」を発表した。「方案」は、地域、都市、主要産業を対象に、炭素モニタリングと評価のモデル事業を実施し、2022年末までに炭素モニタリングと評価の技術体系を構築することを目指す。
 対象地域では、大気中の温室効果ガス濃度の地域モニタリング、毎年の土地利用変化のモニタリング、生態系の炭素吸収量のモニタリングを実施する。都市としては唐山市や上海市など16都市を選定して、大気中の温室効果ガスと海洋の炭素吸収量のテストモニタリングを実施、重点産業としては火力発電、鉄鋼、石油・ガス採掘、石炭採掘、廃棄物処理など5つの重点産業を選定する。基幹産業のなかからは、国家能源集団、中国宝武、中国石油、中国石化、光大環境など企業11社が選ばれ、温室効果ガスのモニタリングを試験的に実施するという。
2021-9-24 科創板日報 https://baijiahao.baidu.com/s?id=1711739409871053303&wfr=spider&for=pc


(2)-① 地方政府・グリーン金融
【衢州市】企業向けにデジタル炭素資産口座を開設
 衢州市の金融機関はこのほど、浙江省江山市にある化学会社を対象に、国内初の「企業炭素口座」にグリーン融資を発行した。資金は、遊休設備を改修し、企業の二酸化炭素貯蔵・変換能力を向上させるために利用され、年間75,000トンの二酸化炭素排出量を削減する見込みになる。
 今年5月、衢州市はエネルギーデータセンターと連携し、「炭素口座」システム構築のモデル事業を行い、国内で最もはやく企業の炭素口座を整備した。グリーン企業や低炭素企業に優遇融資を提供する狙いである。
2021-9-27 浙江日報ホームページ https://baijiahao.baidu.com/s?id=1711994567955957418&wfr=spider&for=pc

【深圳市】生態環境保護条例、9月1日より施行
 「深圳経済特区生態環境保護条例」が9月1日より施行された。二酸化炭素排出のピークアウトとカーボンニュートラルを生態環境建設の枠組みに組み入れ、市政府に主要産業の炭素排出強度基準を設定する権限を与え、排出基準を超えるプロジェクトをネガティブリストにリストアップする内容である。
 条例は一連の革新的な規定を設けている。関連当局に生物多様性保全行動計画を作成するように義務つけた。また、条例は「気候変動への取り組み」章を設け、気候変動、二酸化炭素排出のピークアウトとカーボンニュートラル、炭素排出量取引等について規定した。さらに、条例は政府、企業や機関、専門機関などによる環境情報の開示を追加し、市・区政府とその関連部門が生態系や環境保護に関連する情報を開示することや、主要な排出企業が適時且つ誠実に環境情報を開示することを求めている。
2021-09-02 深圳特区報 http://www.sz.gov.cn/cn/xxgk/zfxxgj/zwdt/content/post_9101475.html

【北京市】「北京ESG投資基金エコロジー・イニシアチブ」を立ち上げ
 9月25日、中国金融学会グリーンファイナンス専門委員会の2021年の年次総会が北京で開催された。北京市金融監督局の支援のもと、テンセント金融研究院、中誠信グリーン金融科技など複数の機関が共同で「北京ESG投資基金エコロジー・イニシアチブ」の立ち上げを発表した。
 ESG投資基金の関連基準・方針・制度の研究・策定に積極的に参加し、ESG投資の考え方を実践し、責任ある投資のイメージを構築すること、関連業界におけるESG投資の推進を支援し、投資分析と投資意思決定の全プロセスにESG投資を効果的に適用し、ESG投資の経験を共有・共同構築するための健全なメカニズムを構築することなどが狙いとされている。同時に、ESG投資の専門分野における人材育成や投資家教育を強化し、国際的な交流を深め、中国市場におけるESG投資の持続的な発展を促進することを提唱した。
2021-9-27 中国経済新聞網 http://finance.sina.com.cn/esg/investment/2021-09-28/doc-iktzscyx6758213.shtml

【山東省】 省エネ・環境保護産業支援を明確 グリーン金融プロジェクトデータベースを設立
 山東省は、このほど質の高い経済発展を促進するため、4回目の政策リストを発表した。省エネ・環境保護に関連する重点プロジェクトへの補助金提供、科学技術革新プロジェクトを支援すると表明。また、ここ数年のあいだ、山東省の関連部門や金融機関は生態環境保護や生態産業へのグリーン金融支援を継続的に拡大する一連の政策や措置を策定・導入した。今回の政策リストは地方のグリーン金融プロジェクトデータベース設立、金融機関への定期的な融資ニーズを提供、企業の炭素排出量取引の実施支援等を明確に打ち出したもので、グリーン金融政策体系のさらなる改善を図っている。
2021-9-11 澎湃新闻 https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_14464672

(2)-② 地方政府・「3060目標」、その他
【北京市】ゼロ炭素都市を建設へ
 9月6日、北京で開かれた2021年中国国際サービス貿易交易会において、北京市生態環境局気候変動対策部部長明登歴氏は、北京のピークアウトとカーボンニュートラルに関する成果と見通しについて説明した。北京市は「カーボンニュートラル」を積極的に計画しており、「2ステップ戦略」を打ち出した。第1段階では2035年までに二酸化炭素の排出量目標に達成させた後、持続的に排出量を減少させることを目標とする。既存の基盤と発展段階の特性に基づいて、北京市は健全なメカニズムと政策を確立し、省エネ、再生エネ、自動車の石油から電気への転換を促進するための対策を強化し、継続的な二酸化炭素排出量の削減を実現していくとした。第2段階では北京の長期的な目標として、炭素排出量ゼロに近い都市の建設を目指す。技術の進歩を生かし、二酸化炭素の排出量を急速に減少させるとした。 
2021-9-7 北京青年報 https://baijiahao.baidu.com/s?id=1710171947556323661&wfr=spider&for=pc

【廈門市】 米中の省市におけるグリーン&低炭素協力
 9月8日、アモイで開催された第21回中国国際投資貿易商談会において、「中国と米国の州・地域とのグリーン・低炭素協力に関するセミナーとマッチメイキング」が開催された。福建省、黒龍江省、雲南省、山東省、重慶市、広東省、四川省、江西省、天津市等の各省市やカリフォルニア州、オハイオ州、ワシントン州、ニューヨーク州、ノースカロライナ州等の地方自治体や経済界の代表者等約260名が参加した。
 このイベントはグリーン・低炭素協力の発展と気候変動の課題への対応に焦点を当てた、米中の省庁間経済・貿易協力メカニズムに基づく最初のセミナーとなる。中国の環境・低炭素社会への移行と巨大な国内市場の優位性は、米中の経済・貿易協力に大きな発展の機会をもたらすと期待されている。
 米国の参加者は、「米国の各州は中国と緊密な経済・貿易関係を築いており、気候変動の課題に共同で取り組み、それぞれの経済発展を促進するために、中国とグリーン・低炭素分野でより実践的な協力をしていきたい」と表明した。
2021-9-8  新華社 https://baijiahao.baidu.com/s?id=1710323572701837146&wfr=spider&for=pc

【安徽省】中国初のメガワット級水素貯蔵プロジェクト、六安市に建設
 安徽省六安市における1MWの分散型水素エネルギー総合利用ステーション及び電力網ピークカットモデルプロジェクトが金安経済開発区で締結された。
 本プロジェクトは、国網安徽総合エネルギー服務有限会社が投資・建設し、六安明日水素エネルギー会社が共同建設するもので、総投資額は5,000万元、敷地面積は10ムーで、1MWの分散型水素エネルギー総合利用ステーションを建設する予定。これは中国初のメガワットレベルの水素エネルギー貯蔵発電所となる。水素発電所は電力網のピークカットの新しいモデルとなり、エネルギー総合利用の新しい手法となる。
2021-9-21 中国蓄能網 http://escn.com.cn/news/show-760881.html

(3) 業界・金融機関
【工商銀行】 森林クレジットを対象とした中国初のカーボンニュートラル債券の販売を開始
 2021年9月24日と26日に、個人と法人向けに2年物の中国農業開発銀行グリーン金融債を店頭で販売した。本債券は、中国で初めての森林クレジットを対象としたカーボンニュートラル債券であり、本債券で調達した資金は、植林や再植林などの森林炭素吸収源プロジェクトを支援し、カーボンピークアウトやカーボンニュートラルの目標達成に貢献する。 
2021-08末 工商銀行ホームページ http://www.icbc.com.cn/icbc/%e5%b7%a5%e8%a1%8c%e9%a3%8e%e8%b2%8c/%e5%b7%a5%e8%a1%8c%e5%bf%ab%e8%ae%af/%e5%b7%a5%e8%a1%8c24%e6%97%a5%e5%bc%80%e5%94%ae%e5%9b%bd%e5%86%85%e9%a6%96%e5%8d%95%e7%94%a8%e4%ba%8e%e6%a3%ae%e6%9e%97%e7%a2%b3%e6%b1%87%e7%9a%84%e7%a2%b3%e4%b8%ad%e5%92%8c%e5%80%ba%e5%88%b8.htm

【中央国債登録決算有限責任公司】中債・工商銀行グリーンボンドインデックスを発表
 9月10日、中央国債登録決算有限責任公司と中国工商銀行は共同で「中債・工商銀行グリーンボンドインデックス」を発表した。
 「中債・工商銀行グリーンボンドインデックス」は、最新の市場基準に基づいた業界初のインターバンク型グリーンボンドインデックスである。銘柄選定は、中国人民銀行、発展改革委員会、証券監督管理委員会3部門が今年4月に公表した「グリーンボンド支援プロジェクト目録(2021年版)」を参照し、銀行間市場における主要な品種のグリーン金融ボンド、グリーン企業ボンド、グリーン債務融資ツール等の主要品種をカバーする。また、このインデックスは銀行間債券市場の取引日において毎日発表される。
2021-9-10 中央国債登録決算有限責任公司ホームページ https://www.chinabond.com.cn/Info/158807312

【中国銀行】「中国銀行カーボンニュートラルに向けた行動計画」を作成
 中国銀行はこの程、「中国銀行カーボンニュートラルに向けた行動計画」を作成したと発表。組織構造、事業発展戦略、商品革新、グリーン運営、ストレステスト、国際協力、能力開発、技術強化等15の分野での取り組みロードマップを作成した。
 同計画では、第14次5ヵ年計画期間中にグリーン産業に対して1兆元以上の金融支援を行うこと、産業向け与信構造の調整を加速し、「高エネルギー消費・高温室ガス排出」産業に対する融資残高管理を強化し、減らしていくこと、排出削減技術、化石燃料のクリーン利用、石炭発電の改修などのグリーンプロジェクトへの与信を増やしていくこと、などの内容が盛り込まれた。
 2021年第4四半期以降、中国銀行はすでに契約済みの案件を除き、海外の新規石炭採掘および新規石炭発電プロジェクトへの融資を行わないと表明した。
2021-09-24 中国銀行ホームページ https://www.boc.cn/aboutboc/bi1/202109/t20210924_20085963.html

【緑色金融委員会】カーボンニュートラル目標下グリーン金融ロードマップに関する研究を発表
 9月25日、中国金融学会グリーン基金専門委員会(GFC)の2021年の年次総会が北京で開催された。中国金融学会グリーン金融専門委員会の主任である馬駿氏は、「カーボンニュートラル目標とグリーン金融ロードマップに関する研究(概要版)」を発表した。
 カーボンニュートラルは中長期的に中国の経済成長にプラスの影響を与えること、今後30年間のグリーン・低炭素投資の累積需要は487兆元(2018年価格換算)に上ること、カーボンニュートラルに向かう過程において、グリーン金融の需要と供給の両方が大幅に強化されるべきこと、金融機関は、環境・気候リスク分析手法を習得し、リスク開示の改善、気候リスク管理ツールを革新すべきこと、グリーン金融政策システムを改善し、政府系投資機関にESG投資を促すことなどの内容を明らかにした。
2021-09-25 中国金融学グリーン金融専門委員会ホームページ http://www.greenfinance.org.cn/displaynews.php?id=3464

3.王婷の視点
中国、海外におけるグリーン投資と脱石炭を推進
 習近平国家主席は、21日に開催された第76回国連総会の一般討論にビデオメッセージ演説で参加し、「中国は発展途上国のエネルギーのグリーン化、低炭素化を強力に支援し、中国国外で新たな石炭発電プロジェクトを建設することはない」と表明しました。
 習主席の発言を受けて、中国銀行は、「すでに契約済みの案件を除き、海外の新規石炭採掘および新規石炭発電プロジェクトへの融資を行わない」と、金融機関として第一声を発したのです。
 習主席の思い切った宣言の背景には何があるのでしょうか。3つの点を指摘したいと考えます。

 一つ目は、中国国内のカーボンニュートラルに向けた石炭の対応と整合性を取るという狙いです。2021年7月1日から施行された「グリーンボンド支援プロジェクト目録(2021年版)」においては、石炭や石炭クリーン利用関連プロジェクトが支援目録から除外されました。また、14次5カ年計画では石炭火力の新規建設を厳しく規制するとの政策をとっています。

 二つ目は、近年、中国企業が海外の石炭発電投資案件から徐々に撤退している事実です。例えば、2019年3月、中国発展投資集団有限公司は、「石炭事業から完全に撤退しており、将来的には主に、太陽光発電、風力発電、廃棄物発電に取り組む」と宣言しました。実務レベルでは、2020年12月に発表された「一帯一路グリーンエネルギーと環境分析報告」で、「2020年には、中国の海外エネルギー投資のうち、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーへの投資が57%を占め、石炭火力発電への投資を大きく上回る」との報告がなされています。「中国の民間企業による対外エネルギー投資のうち、約3分の2(64%)が再生可能エネルギー分野に投資されている」との結論も示されています。このレポートでは、中国の海外エネルギー投資において、環境と気候変動を重要なファクターとして重視し、東南アジアでは、現地の低炭素発展に寄与するように再エネ発電の投資を増やすべきと言明しています。

 三つ目は、将来の中国の海外投資は、グリーン、持続的発展などをキーワードにしていくという表明の意義です。例えば、2018年12月に公表された「グリーン一帯一路投資原則」(GIP)は、中国金融学会のグリーン金融委員会、ロンドン市のグリーン金融・イニシアチブ、PRI(責任投資原則)、世界経済フォーラム、米ポールソン研究所などと協力して作られたものです。この投資原則では、「一帯一路」沿線の新規投資プロジェクトが環境に優しく、気候変動に強く、社会的に包括的であることを保証し、署名企業に対し、持続可能性をコーポレート・ガバナンスに組み込み、「一帯一路」沿線国での投資や事業が気候、環境、社会に与える潜在的な悪影響に細心の注意を払うことを求めています。

 習主席の発言について、中国の業界関係者のあいだからは、世界経済がコロナ禍から回復すれば、旺盛なエネルギー需要が見込まれ、石炭火力発電のビジネスチャンスもあるのに、勿体ない限りだという声もあれば、一方、習主席の発言の前半部分、つまり「途上国のエネルギーのグリーン化、低炭素化を協力に支援する」との言葉に注目し、再エネなど中国企業が強みの分野で新しい活路を切り開くべきことがハッキリした、更なる成長市場をつかめると積極的に評価する声もあがっています。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。 
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