リサーチ・アイ No.2025-125 供給の天井に近づくインバウンド需要 ― 質への転換や地域分散が重要に ― 2025年12月25日 古宮大夢政府は「訪日客数6,000万人・訪日消費額15兆円」を2030年目標に掲げ、第5次観光立国推進基本計画を策定中。インバウンド需要は堅調に推移しており、訪日客数は2025年も過去最高を更新し、4,000万人を上回る見通し。こうしたなか、大阪や東京では客室供給が天井に接近。国際線が多く発着することもあり、東京と大阪の宿泊者は半数近くが訪日外国人。万博開催期間の大阪では、安定稼働率の上限とされている客室稼働率85%に迫る月が増加。今後、供給面の制約が一段と強まる可能性。「爆買い」が流行語となった2015年にかけても客室稼働率が上昇し、東京や大阪では90%を超過した経緯。2010年代後半は東京五輪の開催などを見据えて、企業は客室供給力を拡大。もっとも、今次局面では客室供給の増加が頭打ちとなっているほか、建設業や宿泊業が深刻な人手不足に陥っていることから、供給面の改善余地は小。今後、供給制約の強まりが訪日需要の拡大をより抑える恐れ。需要面の推計では2030年に訪日外客数が5,500万人に達する一方、2027年には東京と大阪の年間客室稼働率が85%と、宿泊供給の天井に接近する見通し。東京と大阪の宿泊供給が天井に到達すれば、訪日需要の増加幅は半減する可能性も。2030年目標の達成には、高付加価値化による一人当たり消費額の引き上げやインバウンド需要の地方分散に重点を置くべき。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)