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2026年05月19日

各位

株式会社日本総合研究所


「建設工事費高騰時代の公共施設整備」に関する基礎自治体アンケート調査を実施

~建設工事の入札不落の理由は「価格が合わない」が7割以上 工事費の高止まりを前提とした計画策定と公共施設マネジメントの抜本的見直しが必要~



 株式会社日本総合研究所(本社:東京都品川区、代表取締役社長:内川淳、以下「日本総研」)は、全国557の基礎自治体(以下「自治体」)を対象に、建設工事費の高騰が公共施設の整備に及ぼす影響についてアンケート調査(以下「本調査」)を実施しました。


■本調査の背景と目的
 昨今、自治体における公共施設整備は、建設工事費の高騰によって入札不落による事業停止や予算見直しを迫られることが少なくありません。その背景には、都心部の再開発や半導体工場の新設といった建設需要の増大に加えて、建設工事を担う人材不足の常態化、長時間労働の是正による工期の長期化、エネルギーコストや資材価格の上昇など、複雑かつ構造的な課題があります。また、直近の国際情勢の不安定化の影響もあり、状況が改善する目途は立っていません。
 一方、公共施設の多くは高度経済成長期に整備されたため、老朽化に伴う問題が顕在化しており、多くの自治体が困難な状況のもとで建て替えや改修などの事業を推進しています。そこで日本総研では、自治体へのアンケートを通じて建設工事費の高騰が公共施設整備に与える影響を把握し、今後取るべき対応策を提言することを目的に、本調査を実施しました。


■本調査の概要
調査方法:インターネット調査
調査期間:2026年1月30日~2月20日
調査対象:人口5万人以上を基準として抽出した557の基礎自治体(特別区除く)
回答数:155の基礎自治体(回答率27.8%)
主な調査項目:建設工事費高騰に対する認識、公共工事への影響、これからの公共施設整備の方向性


■調査結果
(1)建設工事費高騰に対する認識
 昨今、建設工事費が高騰していると思うかという設問に対して「非常に高騰している」「高騰している」と回答した自治体は合わせて154に上り、ほぼすべての自治体が高騰を認識していることが明らかになった(図表1)。


(図表1)昨今、建設工事費が高騰していると思いますか。(N=155)
 

 建設工事費が「非常に高騰している」「高騰している」と回答した自治体に、いつ頃から建設工事費の高騰を実感するようになったかを尋ねた設問では、ここ5年間に高騰を実感するようになった自治体が全体の8割を超え(「4~5年前」「2~3年前」「1年前」「1年未満」を選択した回答者の合計)、そのうちおよそ46%が「2~3年前」から実感していると回答した(図表2)。

(図表2)いつ頃から建設工事費の高騰を実感するようになりましたか。(N=154)
※図表1の設問で「非常に高騰している」または「高騰している」を選択した回答者を対象にした設問
 

 次に、今後、建設工事費の高騰が収まると思うかを尋ねたところ、「上昇がとまり、横ばいとなる」と回答した自治体はわずか3にとどまった(図表3)。

(図表3)今後、建設工事費の高騰は収まると思いますか。(N=154)
※図表1の設問で「非常に高騰している」または「高騰している」を選択した回答者を対象にした設問

(2)入札不落等の状況
 過去3年間で建設工事の入札が不落となった件数を尋ねたところ、7割以上の自治体が「4件以上」あると回答した(図表4)。不落の理由は、「価格が合わない」が約77%と最も多く、次いで「工期が厳しい」が約23%であった(図表5)。

(図表4)過去3年間で建設工事の入札が不落となった件数を選択してください。不落とは入札参加者
がいなかった場合、入札参加者はいたが落札者がいなかった場合の双方を含みます。(N=155)

(図表5)不落となった主たる理由についてどのように認識していますか。(複数回答)(N=145)
※図表4の設問で「4件以上」または「1~3件」を選択した回答者を対象にした設問
   

 不落の理由に「価格が合わない」を選択した自治体に、案件が不落となった後にどのような対応を行ったかを複数回答で尋ねたところ、「建設工事の内容を大きく変えずに予定価格を高くして再度公告した」という回答が約52%と最も多かった。一方で、「予定価格を大きく変えずにVE(バリューエンジニアリング)・CD(コストダウン)を行ったうえで再度公告した」案件(約23%)や、「事業手法の見直しを行った」案件(約17%)も一定程度見られた(図表6)。

(図表6)不落となった後、どのような対応を行いましたか。(複数回答)(N=111)
※図表5の設問で「価格が合わない」を選択した回答者を対象にした設問

(3)工事費上昇に関する契約上の対応
 過去3年間で建設工事中に物価スライド条項適用や物価上昇を理由として契約変更を行った件数を尋ねたところ、半数以上となる約57%の自治体が「4件以上」または「1~3件」と回答し、建設工事中の工事費上昇に起因する契約変更を行っていることがわかった(図表7)。
 また、契約変更を行った案件のうち、主な変更内容として最も多かったのが「工事内容は大きく変えず契約金額を増額した」とする回答で、およそ95%に上った(図表8)。

(図表7)過去3年間で建設工事中に物価スライド条項適用や物価上昇を理由として契約変更
を行った件数を選択してください。(N=155)

(図表8)契約変更の主たる内容を選択してください。(複数回答)(N=88)
※図表7の設問で「4件以上」または「1~3件」を選択した回答者を対象とした設問

 資材物価などの変動に応じて契約金額を見直すスライド条項の適用は、急激な工事費の上昇を背景にインフレスライド条項を適用した案件が約77%と最も多いが、全体スライド条項や単品スライド条項を適用した案件もそれぞれ2割程度ある(図表9)。物価スライドの指標は「一般財団法人建設物価調査会発行の建設物価」が最も多く利用され、次いで「その他の公的な指標」、「業者見積」と続く(図表10)。

(図表9)契約変更時に物価スライドに関する対応(工事請負契約やPFI事業契約における
スライド条項の適用等)は行いましたか。(複数回答)(N=88)
※図表7の設問で「4件以上」または「1~3件」を選択した回答者を対象とした設問

(図表10)物価スライドの指標に用いたものを選択してください。(複数回答)(N=86)
※図表9の設問で「全体スライド条項を適用した」「単品スライド条項を適用した」「インフレスライド条項を
適用した」を選択した回答者を対象とした設問

(4)工事費上昇が続くなかでの公共施設マネジメントのあり方
 建設工事費の高騰が続く、あるいは高止まりする場合に、「公共施設の新設又は建替の要否をこれまで以上に慎重に見極めたうえで行うと思う」と回答した自治体は全体のおよそ86%に上った(図表11)。一方で、4割の自治体が今後5年間に10,000㎡以上の大型公共施設の整備または大規模改修の予定が「ほぼ確実にある」または「あるかもしれない」と回答した(図表12)。

(図表11)建設工事費の高騰が続く又は高止まりの場合、貴自治体における公共施設の新設又は
建替はどのようになると思いますか。(N=155)

(図表12)今後5年間に10,000㎡以上の公共施設の整備又は大規模改修の予定がありますか。(N=155)
   

 こうしたなか、建設工事費全体の抑制のためにどのような工夫が有効かを複数回答で尋ねたところ、 「集約化や複合化等による施設面積の縮小」(約73%)を筆頭に、「PFIなどの民間ノウハウの導入」や「補助金の活用」(いずれも約47%)、「新築ではなく改修の実施」(約43%)といったさまざまな方策が想定されている実態が浮き彫りになった(図表13)。

(図表13)建設工事費の抑制のため、どのような工夫が有効だと思いますか。(複数回答)(N=155)


■提言
 本調査の結果を踏まえ、自治体が取るべき対応策として以下を提言する。
【建設工事費の高騰を前提とした計画策定・事業実施】
 建設工事費の水準が今後大きく低下するような要因については現時点では確認できず、今回調査した自治体も同様の認識である。建設工事費の高騰およびその継続的な上昇は今後も続くトレンドであり、各種計画策定や事業実施における所与の条件として対応していく必要がある。
 したがって、施設整備の方向性を決定する基本構想や基本計画の段階から、延床面積の圧縮など、抜本的に建設工事費を抑制できる方策を検討すべきである。また、想定以上に建設工事費が高騰した場合の“代替プラン”をあらかじめ用意しておくことが望ましい。

【丁寧な官民対話による実勢価格を踏まえた対応】
 価格が合わないことを原因とした不落は相当数発生しており、極めて深刻な状況である。現在は予定価格を高くすることで対応している自治体が多いが、公共工事においては不落から再入札までの間に予算に関する議決が必要となる場合もあり、官民双方の負担や、時間の経過によりさらなる工事費の増加が懸念される。そのため、公告前から官民が十分に対話することで、市況を踏まえた予定価格を設定することが肝要である。

【官民連携によるコスト削減可能性の確保と財源創出】
 民間の資金やノウハウを活用するPFI事業や、民間事業者が設計・建設・運営を一体的に担うDBO(Design-Build-Operate)事業の場合、落札から着工まで1年~2年の期間が空くため、その間の物価上昇の不確実性から官民連携事業を避ける傾向がある。しかし、自治体が主導して設計・建設・運営などを個別に発注する従来方式や、施工予定者が設計段階から参画するECI(Early Contractor Involvement)方式を採用することで必ずしも建設工事費を抑制できるわけではない。そのため、性能発注によって仕様の選択肢を広げることで、建設工事費の削減可能性を高める官民連携事業にも有用性が認められる。
 また、公共施設の集約化によって生まれる遊休公有地の売却や、公共施設整備と併せて民間収益施設を誘導することによって、新たな財源を生み出すことにも取り組むべきである。

【公共施設マネジメントのあり方の抜本的な見直し】
 自治体はかねてより公共施設等総合管理計画に基づき公共施設マネジメントに取り組んできたが、現在の建設工事費の高騰はその前提を揺るがすレベルのものとなっている。同計画においてシミュレーションした更新費用が大幅に増加する状況であり、自治体は公共施設マネジメントの考え方を根本から見直すとともに、さまざまな方策を組み合わせた総力戦での対策を行う必要がある。
 具体的には、「新築から改修への方針転換」「民間ストックの活用」「複数の自治体による公共施設の共用」「公共サービスのデジタル化による公共施設の廃止・縮小」など、これまで主に合意形成の面で課題があり進んでこなかった方策に真剣に取り組み、推し進める必要がある。
 なお、これらの取り組みには国の財政的な支援も必要である。2025年度から、複数の自治体による公共施設の共同整備が公共施設等適正管理推進事業債の対象となったが、それに加えて、ハード(施設)からデジタルに公共サービスを切り替えた場合に、そのデジタルサービスの導入や利用料に対して交付金を付与するなど、公共施設マネジメントに関する挑戦的な取り組みに対するインセンティブを付与することを期待する。


以上


■本件に関するお問い合わせ先
【報道関係者様】 広報部 金井  電話: 080-3437-9449
【一般のお客様】 リサーチ・コンサルティング部門 富樫、山崎、小松
         メール:200010-cost-survey@ml.jri.co.jp

 
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